表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/372

隠しキャラ

※嘔吐注意

『転移の魔法陣はコスパが悪いんだよね。一回しか使えないし、魔法陣を描くのに時間がかかるし、込める魔力量に反して移動距離が短い。あの距離を移動するならボクは自分で移動した方が速いよ』


 転移が発動したことにより歪む視界の中で院長の言葉を思い出す。


 院長が本気を出すと、瞬間移動みたいな速度で移動できるからなぁ。


 現実逃避と共にそんな感想を抱いた。

 気づいたときには驚くモブ君の前から見知らぬ暗い部屋にいた。石で作られた壁で囲われた部屋だ。唯一の出入り口は鉄格子で覆われている。まるで牢獄のようだ。

 院長が説明してくれた移動距離的に王都内であることは確かだ。

 手元を見ると、持っていた紙は見当たらない。

 どうやらモブ君の所に落としてきたらしい。


 良かった。これで盗ってきた証拠まで手元にあったら目も当てられない。


 モブ君なら証拠を持ち帰ってグレイ隊長に知らせてくれるだろう。

 一回発動してしまったけど、魔法陣が解析できるよう祈るばかりだ。

 転移と聴力強化の影響で気持ち悪さMAXの中、そんな事を考えていると視界の隅で何かが動いた。

 次の瞬間には暗がりから躍り出るように、獣のような何かが飛び掛かってくる。


 それが何か確認する間もなく、反射的に殴り飛ばしてしまった。


 こちとら就寝中だろうが寝起きだろうが、危害を加えられそうなら戦えるように訓練されてるんだ。

 体調不良だろうが甘く見るなよ。

 獣のような何かは壁際まで吹っ飛ばされていった。

 背中を石の壁に強かに打ち付けて呻くそれは、よく見れば人間だった。

 暗がりでよく見えないが、無造作に伸ばされた身長ほどの黒髪に今にも崩壊しそうなボロボロの服を着ている男だ。


 今の拳の感覚からして、あばら骨の二・三本は逝ったな。


 それはそれとして気持ち悪い中、反射的に体を動かしたらどうなるか。


 吐いた。我慢できなかった。


 なので暗い部屋の中、殴られ壁に体を打ち付けて悶える男とゲロを吐く女という地獄みたいな部屋が構築された。

 もう一度襲ってこなくて助かった。

 吐きながらでも戦えるけど、出来れば勘弁してほしい。

 胃の内容物を吐ききってようやくスッキリした頃には、相手の男も呻きながらどうにか体を起こせるようになっていた。

 生理的な涙を拭いつつ相手に対して構えるけど、相手の男は私に襲い掛かってくる様子はない。

 むしろ戸惑ったように私を見ている。


「おまえ、だれ?」


 ようやく相手から発された言葉は、図体の割には余りにもあどけない、子どものようなたどたどしい言葉だった。

 まるで話すのに慣れてないみたいだ。

 油断させるためというのは、その表情も子どものように無垢だ。

 孤児院の子どもたちの方がまだ擦れている。


「私はサクラ。貴方は?」

「…………名前、ない」


 それでも油断しないように警戒しつつ、距離を詰める。

 男は警戒感もなく、私を見つめている。

 暗がりでも相手の顔がある程度細部まで見えるような距離まで近づいて、あることに気づいた。


 この男、フォーサイシアにそっくりだ。


 色合いが2Pカラーみたいに違うだけで、それ以外はほぼフォーサイシアそのものである。

 そこで私は思い出した。


 こいつ、隠しキャラじゃないか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ