道端の子ども
そんなわけで、教会への道を歩いて行く。
「この道も久しぶりだな...」
私が好奇心から裏路地に飛び込んで、アイリスと出会った以来だ。
あの時、道からそれなければゲームのシナリオに巻き込まれる事はなく、平穏に暮らしていたのだろうか。
いや、クロッカス殿下は院長から私の事を打診されていたらしいから、どっちみち巻き込まれていたのかもしれない。
シナリオが進行してからだと革命軍云々の話になるので、早目にフラグを叩き折って正解だったかも。
せっかくクロッカス殿下が国を立て直したのに、革命で国内をぐしゃぐしゃにするんじゃないよ。
クロッカス殿下がラスボスとして死ぬか追放されると、アイリス達が国を立て直さなきゃいけないんだぞ。十代の子供にそれが出来るのだろうか。
ゲームはアイリスと攻略対象の結婚式でハッピーエンドだけど、その後の国内情勢がとても不安だ。
そんな事を考えている間に、私がアイリスと出会った裏路地への道が見えてきた。
懐かしさから、その道をちらっと覗いてーーー意外な人物がいるのに気づいた。
「あれ、モブ君?」
「サクラちゃん? どうしてここに?」
私の声に振り返ったのはモブ君だ。
彼はどうやら数人の子どもと話していたようだ。皆、今にも破れそうなボロボロの服を着ている。
子どもの一人がモブ君の袖を引っ張る。
「そろそろ行くね、にーちゃん」
「うん、ありがとね」
モブ君は子ども一人一人にお金を渡す。
子ども達は大事にそれを抱えて去っていった。
「何をしてたの?」
気になって尋ねてみると、彼は子ども達に手を振りながら答えてくれた。
「情報収集だよ。あの子達は表に出てこないような事をよく知ってるから、よく話を聞いてるんだ。情報を貰った分、報酬は支払わないとね」
「そんな事してたんだ」
「金銭が発生する分、正確に答えてくれる子が多いからね。通行人に聞くと嘘つかれたり、曖昧な事が多いからさ」
シャーロック・ホームズの少年探偵団みたいな事してるな。ホームズも子ども達にお金渡して情報収集していたと、推理系大好きな妹が言っていた。
モブ君は私に再度向き直って、真剣な顔で尋ねてきた。
「サクラちゃんにも聞きたいんだけど、孤児院で子どもがいなくなったりしてない? 最近、身寄りのない子や貧乏な家の子がいなくなる事件が起きてるんだ」
ベイカーストリートイレギュラーズ(BSI)とかベイカー街遊撃隊って書いてもホームズを読んでない人には伝わりにくいかな、と思って『少年探偵団』にしてます。