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執事

 就職についての悩みやらグレイと話し込んでいたらいつの間にか目的地に着いたらしく、馬車が止まった。

 めちゃくちゃ話し込んでしまった。

 異世界でも夢では食べていけないからね、世知辛い。

 グレイが先に馬車を降りて、さりげなく手を貸して降ろしてくれる。

 紳士……! 

 こんな扱い受けたことないから恐る恐る手を取って降りたら笑われた。

 庶民というか孤児なんだからしょうがないでしょ。


「いやぁ、嬢ちゃんはしっかりしてるけど、そうしてみるとまだ子どもだよな。なんか同い年と話してる気分だったんだけど……っと、流石に失礼か」

「いえ……その……グレイさんは何歳なんですか?」

「俺? 33歳」


 私は前世が23歳+この世界で10年経ってるので……。

 精神的には同じ年ですね! 言えないけど!

 笑って誤魔化しつつ、前を向く。

 目の前には明らかにお貴族様のお屋敷とわかるような豪邸が佇んでいた。ただ、こんな立派なお屋敷なのになんとなく陰鬱というか、暗い雰囲気を醸し出している。

 なんでだ。今からラスボスが待ち受けているからか?

 アイリスやロータスを乗せていた馬車は見えない。この屋敷に来たのは私たちだけのようだ。

 私の視線に気づいたのか、グレイが説明してくれる。


「他の馬車は城に直行してる。ここはクロッカス殿下の別邸だ。普段は城で寝泊まりしてるから、あの方はほとんど使わないんだけどな」


 使わないのにこんなお屋敷持ってるんですか?

 流石王族……金持ちは違うわ……。

 私が呆気に取られてる横で、グレイは遠慮なく正面の扉を開けた。慌てて後に続くと、中は赤い重厚な絨毯が敷かれただだっ広い玄関ホールが見えた。

 こういうところって使用人がずらっと並んでお出迎えするイメージだったんだけど、想像と違って出迎えてくれたのは一人だけだ。


「ようこそいらっしゃいました。お待ちしてましたよ。サクラさん」


 出迎えたのは燕尾服の男だ。柔らかいブラウンの髪に、理知的な眼鏡の奥に琥珀色の瞳が見える。グレイと同じ年ぐらいだろうか、細身で隙が無い。すれ違った女性が思わず振り返るような整った美貌と大人の色気があるが、どうにも微笑みの下で人を見下してる感が否めない。

 はっきり言って性格悪そう。


 あ~! 思い出した! 戦ったことある!!

 ラスボスの側近その2!

 彼もルートボスだったはずだ。誰ルートだったか忘れたけど。


「寂しいお出迎えで申し訳ありません。現在、人払いをしてありまして」

「いえ、お気遣いなく……。あの、なんで名前を……?」


 わざとらしく一礼する男に恐々尋ねる。

 今グレイと一緒に到着したばかりなんだけど。普通に怖い。


「お客様の情報を把握するのは当然では? ああ、申し遅れました。私はアンバー。気軽に呼び捨てにしていただいて構いませんよ」


 呼べないです。

 確かこの人、ゲームでも見た目通り性格悪くて手段があくどいって妹が言ってた気がする。実際どうなのかは知らないけど。


「ではこちらへどうぞ。ご案内します」


 アンバーに先導されて、玄関ホールの正面にある階段を上って二階に上がる。

 

「それにしても殿下も面倒なことを。殺すか投獄して死ぬまで放置する方が速いと思いませんか? グレイ」


 アンバーから何の気なしに笑顔で投下された会話に、思わず彼の顔を二度見してしまう。対するグレイはため息交じりだ。


「俺が言うのもなんだけどあんまり脅すなよ。お前なら嬢ちゃんが誰の保護下か知ってるだろ」

「知ってますけど。残念ですね、怯えて震える様を堪能しようと思ったんですけど」


 クスクスと、獲物を舐るような目で見てくるアンバー。およそ人に向ける視線ではない。ビビり散らかして一歩引いたところで、グレイが間に入ってくれた。


「気にするな、嬢ちゃん。こいつは性格終わってるだけだ」


 本当に性格悪かったわ。

 段々不安になってきたんだけど、このままラスボスに会って大丈夫なのかな……?


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