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剣を握った理由

 結論から言おう。

 一回も攻撃を当てられなかった。

 それどころか、グレイ隊長を一歩も動かせなかった。

 ルートボスと言っても貴族の奥様でステージギミック込みの強さとは違う。純粋な強さというのを見せつけられた。

 そもそも人対人なんて院長くらいしか相手してないから、実践経験不足もあるんだろう。


「ありがとうございました......」


 敗北感で一杯になりつつ、頭を下げる。

 グレイ隊長は黙ってそれを見た後に口を開いた。


「嬢ちゃん。やっぱり訓練なんていらないと思うんだ」

「何でですか!? グレイ隊長に手も足も出なかったのに!?」

「それは俺が嬢ちゃんの戦い方に慣れてるからだ。お前の保護者とそっくりだな。あいつから教えられたなら当然と言えば当然だけど」

「院長と......?」


 そういえば院長とグレイ隊長は知り合いっぽい会話してたな。

 クロッカス殿下と院長が親しいなら、知り合いでもおかしくないとは思ってたけど、それ以外に関わりがあったのだろうか。

 私の疑問にグレイ隊長はため息を吐いて遠くを見る。


「嬢ちゃんには悪いけど、俺はガキの頃からあいつの事嫌いなんだ。いつも人の事見下しやがる。だから一回ぐらい勝ちたくて何度も挑んでるんだが、勝てた試しがない。本当、努力したってどうにもならない事もあるって、毎回思い知らされるんだ」


 そう語るグレイ隊長の目は、それでも諦めない光を宿していた。


「それでも勝ちたいんですね」

「俺が剣を握った最初の理由だからな。ガキ臭くてバカみたいだろ」

「そんな事ないですよ。私も院長くらい強くなりたいですけど、それは最終的に到達出来ればいいと思ってる目標で、グレイ隊長のは院長を超えたいって言う私より上の目標です」


 院長はバグみたいに強いからな。瞬間移動みたいな身体能力に頭の回転の速さが伴って、どんな状況でも焦ってるところを見た事がない。


「私は指導してもらった立場だけど、院長の強さを知ってて挑むなんて並大抵の覚悟じゃできないと思います。それを心折れずに何回もだなんて、グレイ隊長はカッコいいですよ。もしそういう場面を見かけたら、私は院長よりもグレイ隊長を応援します」

「ありがとな、嬢ちゃん」


 グレイ隊長は頬を掻きながら視線を逸らして笑う。

 照れてるんだろうか。確かに大人になると褒められるのが少なくなるから、君恥ずかしいのかもしれない。


「でも院長はそんなグレイ隊長の事を気に入ってると思いますよ」

「嫌な事言わないでくれ」


 グレイ隊長は本気で嫌そうな顔をする。

 でも本当に院長はグレイ隊長みたいに自分に挑みに来てくれる人は好きだと思う。

 妖精みたいな見た目に反して、戦闘狂の脳筋気質なので。


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