修行
妹からの予言?があった今、私は自分に出来る事をすべきだろう。
「修行させてください!!」
「なんで?」
目の前には困惑したグレイ隊長が腕を組んでいる。
今日は休みだ。昨日の食事会で疲れもあるし、ゆっくりするはずだったんだけどそれどころではなくなってしまった。
だから帰る前にグレイ隊長を捕まえて、頭を下げている。
今までの傾向を鑑みるに、中ボス→ルートボスと来て次に何が来るかわかったものじゃない。
次がまたルートボスの誰かでも絶対に勝てない。
ラスボスの殿下と対立したら無理。物理的に首が飛ぶ。
なので今、自分にできることは殿下と対立しないようにしつつ、教会関係のフォーサイシアと関わらないこと。
そしてうっかりして巻き込まれた場合に備えて、自分の実力をあげること。
いつ何時たりとも最悪の場合を想定して動いた方がいいって院長も言ってた。
「アネモネ様の件で痛感しました。もっと強くならないと……」
「嬢ちゃんはそれ以上強くならなくていいと思うんだ」
「ダメです! 私なんてまだまだなので。出来れば院長と同じくらい強くなりたいんです!」
「嘘だろ...」
グレイ隊長は信じられないものを見る目で私を見る。
なんでだ。目標は高い方がいいって院長も言ってたぞ。
「ならその院長に頼めばいいんじゃねーの? あいつなら喜んで嬢ちゃんに教えてくれるだろ」
「それが院長から手紙の返事も来なくなってしまいまして」
忙しいのかもしれないが、無視されているようで悲しい。
「あいつ、まだ嬢ちゃんに会ってないのかよ」
遠くを見るように、ぼやくグレイ隊長に縋りつく。
「お願いします! 頼めるのはグレイ隊長だけなんです~!」
実力的にラスボスのクロッカス殿下か、ルートボスのアンバーかグレイ隊長に鍛えてほしかった。クロッカス殿下は多忙だし、王族に頼めるほど度胸が座ってない。アンバーは論外。
グレイ隊長も忙しいだろうけど、ここは土下座してでも頼みこもうと思っている。
私の命がかかってるんだ。
グレイ隊長は頬を掻いて、しばらく考え込んだ後に息を吐いた。
「いいぜ。嬢ちゃんの頼みだ。特別だぞ」
「ありがとうございます!」
流石グレイ隊長。優しい。




