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謎が多い人

「院長……? 知り合い、なんですか……?」


 凍える空気の中、恐る恐る言葉を口にする。

 院長はふっと表情を和らげて私を見た。


「そうだね、グレイの事はよく知っているよ」


 そして楽し気にグレイを指さして話し出す。


「彼はサクラが生まれる前からクロッカス殿下に使える忠臣だ。殿下に見出されてから今までずっとね。命令されれば護衛から戦闘指揮までこなせる優秀な騎士だよ。誰が言ったか『クロッカス殿下の狗』とは彼の事だ」

「お前が言ってるだけだろうが」

 

 グレイが憮然とした顔で言い返す。

 『ウィスタリア王国』の政治を牛耳ってるクロッカス殿下の側近相手にそんな口聞けるなんて、院長ってやっぱりめちゃくちゃ偉い人なのでは?

 でもゲームで院長を見た覚えがない。

 だけどこんなに目立つ容姿してるし、ひょっとしたらゲームで出てくるけど戦闘に関与してない登場人物とか?

 そうすると私はまったくわからないんだよね……。

 私の混乱を他所に、グレイが腕組みをして苛立たし気に院長に問いかけた。


「で? 本当に何の用だよ。ただお喋りに来たわけじゃないだろ」

「さっき言っただろ? サクラの様子を見に来たんだよ。ついでに言伝も預かってきたけど」


 院長が私を見る。


「クロッカス殿下がサクラに会いたいってさ」

「「は?」」


 私とグレイの発言が重なる。


「あの方はまた面倒な事を……」


 グレイが頭を抱えている横で、私は混乱の局地だ。


「院長、クロッカス殿下ともお知り合いなんですか!?」

「うん、よく知ってる」

「嘘!?」

「嘘じゃないよ」


 笑顔の院長に嘘は見られない。

 この人、とんでもなく偉い人なのでは!?


「院長! クロッカス殿下をよく知ってるなら私の事もなんとかなりませんか!?」


 最後の頼みの綱とばかりに私は院長に縋りついた。

 院長は私の手を包み込むように優しく掴む。


「大丈夫だよ、サクラ。何があってもボクが助けるから、安心して行ってきなさい」

「行きたくないんですけど!?」


 助けてくれるのはありがたいんだけど、そもそもおっかないラスボスに会いたくないんですよ!


 ビビり散らかす私をなだめる様に、院長が私に目線を合わせる。


「サクラ。色々な噂はあるけどボクから見たクロッカス殿下は優しい人だよ」


「……え?」


「信じなくてもいいけど、君の目でちゃんと見てきて欲しい。真実を」


 私の手を取ったまま、祈るように話す院長の姿に二の句を繋げなくなる。

 そんな私に再び微笑みかけると、院長は私の手を離した。


「じゃあボクはこれで。またね、サクラ」

「え、ええ!?」


 驚く私を置いて、院長はフードを被ると颯爽と馬車から出て行った。


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