表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/372

指輪

 フラックスとの話が終わるのを見計らって、クロッカス殿下が声をかけてきた。


「サクラ。長話に付き合わせてすまなかったな。もう日が暮れてしまったから、一緒に行こう。送っていく」

「え、いえいえお気遣いなく……!」


 私とフラックスの話し合いが終わったのを見て、クロッカス殿下が声をかけてきた。

 話し合い中、邪魔にならないように気配を消していたのにお腹の音で完全に注目を集めてしまった。

 赤くなるやら青くなるやらで忙しい私にクロッカス殿下は目を細めて笑う。


「遠慮するな。お前は愛らしいからな。何かあってからでは困る」


 そういうことお世辞でもさらっと言えるのはどうかと思うんですよ。

 続けてグレイ隊長が笑みを浮かべて口を開く。


「そうだな。遅くなっちまったけど、今日の格好も可愛いぜ。何着ても似合うな」

「これは用意されたものを着ただけなので……。というより、私の服は……?」


 シャワー浴びてから、ずっとゴスロリ服なんだが。流石にこの格好で帰りたくない。どんな羞恥プレイだ。


「あの服は乾いたらお前の所に送る。その服も貰っていってくれ。付き合わせてしまった詫びだ」


 クロッカス殿下の言葉によりゴスロリ服で帰ることが決定した。

 くそう、殿下は親切から言ってるから断れない。


「あ、そうだ。……殿下、お借りしていた指輪をお返しします」


 ここでようやく、私は今までのシリアスな話し中に言い出せなかった事を言う事が出来た。

 アネモネを眠らせるために貸してもらった指輪を手のひらに乗せて差し出す。

 しかしクロッカス殿下は指輪を取らずに、自らの手で私の手のひらを包むように指輪を握らせた。


「それはお前が持っていてほしい。売ろうが捨てようが構わない。好きにしろ」


 そう言って微笑むクロッカス殿下。その左手は水鏡に触れる時に手袋を取ったままだ。


 殿下が左手の薬指にしてる指輪と私の持ってる指輪、同じものに見えるんですが? 結婚指輪では?? 恐らくアネモネの前の奥さんとの指輪で、私のは亡くなった奥さんの指輪では??? そんな大事な物を私に????


「いえ、そういうわけには……」

「私がいいと言っているんだ。そろそろ行くぞ。時間が惜しい」


 そう言うと殿下は私の手を取ったまま、歩き始めた。

 本当に送っていってくれるつもりですか? それと一々手を取って歩かなくても歩けますが?

 また何か勘違いされそうで慌ててフラックスを見ると、彼は自分の持っている水鏡を見ていた。鏡が光っている事から何か映像が流れているのだろうが、こちらには見えない。

 それを見たまま固まっているので、フラックスはこちらを見ていない。私は殿下に手を引かれたまま、部屋を後にした。

 別れの挨拶出来なかったけど、なんか集中してたみたいだし仕方ないか……。

 ちなみにクロッカス殿下には本当に宿舎まで送ってもらった。王族の申し出を断れないよ。

 馬車で送ってもらったけど、中は広いし座席はふかふかだしとても快適だった。でもそんな馬車で帰ったら普通目立つわ。夜中で良かった。

 そんなこんなでようやく自分の部屋に辿り着く。

 今日は大変な一日だったな……と思いながら扉を開けると、机の上に服が届いていた。


 デジャブ?


 恐る恐る見てみれば、今日着ていた服が一点の皺もなく綺麗になって置かれていた。

 こんな不法侵入して服を届けるのは院長しかいないだろう。ということは、院長がこの服を回収してゴスロリ服を置いていったって事? 

 服の趣味どうなってんだよ。前回のワンピースはまぐれだったのか?

 そもそもそんな暇があるんだったら、私に会って欲しいんだが??

 そんな思考も空腹と今日の疲れでどうでもよくなり、ベッドに身を投げる。

 そしてぼんやりと手に持っていた高そうな指輪を見つめた。


 こんな高価そうな物、持ってる方が怖いんだが?


フラックス編はこれにて終了です。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ感想、評価等よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ますます娘の疑いがすすめる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ