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反抗期?

 とりあえず温まれればいいとばかりにシャワーだけ浴びて浴室から出る。烏の行水もいいところだ。

 用意されていたふかふかのタオルは使い心地抜群だ。家に欲しい。

 着ていたずぶ濡れの服は回収されたのか、既になくなっていた。

 それはいいとして問題は、ついでのように用意されていたのは黒のワンピースだ。丈は長いけど凄くゴスロリっぽい。そして揃いの黒のリボンが付いたヒールだ。


 私には似合わないと思うんだが。誰の趣味だ? 殿下? でも殿下は用意させるって言ってたし違うか……。


 ついでに下着までご丁寧に用意されていた。なぜかアンダーもバストもぴったりである。

 なんでだ。怖い。

 疑問と恐怖しか感じないが、着ていた服はないので用意された物を着るしかない。

 諦めて着替えるが、気恥ずかしさしかない。

 この格好で誰でも会いたくないが、殿下が待っていると言っていたし、王族を待たせるのは怖いので仕方なく脱衣所の扉を開ける。

 そこにいたのはフラックスだった。

 廊下に寄りかかり腕を組んで、苛立たし気に指をトントンと叩きながらこちらを見ている。


 怖……。


 うっかり開けた扉をそっと閉めるところだった。否、閉めようとしたらフラックスに扉を捕まれて阻止された。


「おい、なんで閉めようとする」

「すみません。忘れ物をしたような気がして」


 即行で嘘をついたが、恐らくバレてる。早く出て来いとフラックスの顔に書いてある。扉を盾にするのをやめて、大人しく廊下に歩を進める。


「お前、あれはどういう事だ。クロッカス殿下と随分親し気だったじゃないか。母上より優先されるなんて、随分大事にされてるじゃないか」

「違いますよ。あれはブルーアシード様と顔を合わせるのが気まずいとか、奥様の事はそちらに任せておこうという気遣いか何かです」


 そうでないと説明がつかない。殿下が私を優先する理由なんてないのだし。

 しかしフラックスは今一納得していないようだ。


「そんな風には見えなかったが。……それに、殿下から俺と話をするからお前を連れてこいと言われた。大方、お前が殿下に進言したんだろ」

「そんなことはないですよ? ブルーアシード様の言葉が届いたのでは?」


 実際はそうなんだけど、これ以上余計な誤解を生まないようにあえて否定しておく。

 そんな私にフラックスは溜息をついた。うーん、これもバレてそうだな。お貴族様なんて騙し合いが多そうだから、嘘に敏感なのかもしれない。


「……フラックスでいい。お前は母上を助けてくれた。特別に許可してやる」

「あれは殿下のお陰ですよ」

「殿下に礼を言うくらいなら、お前のお陰にした方がいいだけだ。……ありがとう」


 そっぽを向いて礼を言われた。その少し照れくささを隠そうとする顔は年相応に見える。


 素直じゃないなぁ。反抗期か?


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