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フラグが立ち始めました

 路地裏でアイリスを支えながら、伸びたロータスを見やる。

 頭に血が上ってたせいで、この後どうするか全然考えてなかった。

 アイリスは呆然自失といった状態で、逃げる気配はなさそうだからいいんだけど。

 悩んでいたら、場違いな拍手がその場に響いた。


「やるじゃないか、嬢ちゃん」


 またもや聞いたことないのに聞き覚えのある声。

 ばっと後ろを振り返ると、そこには黒い軍服を羽織った30代くらいの男性が立っていた。

 短い灰色の髪と灰色の目、鍛え抜かれた筋肉質の身体。華やかさはないが、男前な顔立ちをしている。剣を携えた姿はまさに経験を詰んだ軍人といった風貌だ。


 この人、ゲームで戦ったことある~!


 一瞬思考がゲームに持っていかれそうになったが、今はそれどころではない。


「あ、火事! 向こうで火事になりそうで……」

「ああ、俺が消しておいたから大丈夫だ。部下が呼びに来てくれたからな」


 さらっと解決してくれていた。

 部下、と言って男性が自分の後ろを指さすと先ほどの兵士さんが走ってくるのが見えた。

 兵士さんが言ってた『隊長』って貴方の事だったんですね。


「ありがとうございます。私じゃどうにも出来なくて……」

「いや、礼はこっちが言いたいくらいだ。面倒事が片付いて助かったよ」


 頭を下げて礼をすれば、労わるように肩を叩かれた。

 面倒事ってアイリスとロータスのことですよね。

 顔をあげると、ロータスは兵士さんが抱えていた。が、私の肩から手が離れることはない。


「悪いが嬢ちゃんに話があるんだ。ちょっと来てもらおうか」


 いかにも悪だくみしてますって感じの笑顔で言われた。

 

 あれ? ひょっとして目撃者は消すとかそういう奴ですか?


 そう、この男性はゲームの登場人物であり、ラスボスの側近である。つまり悪役だ。

 『恋革』はそれぞれの攻略対象によって、ラスボスの手前で立ちふさがる相手が違うように出来ていた。

 ルートボスと呼ばれた彼らは物語において主人公を妨害し、何度も顔を出して立ちふさがる相手であり、敵キャラながら人気のある存在でもあった。

 確かこの男性はロータスルートの敵キャラだ。妹を手伝う時に戦った記憶がある。

 さっきロータスと会ったからって、この人とも出くわすとは思わなかったけど。


 ひょっとして、ゲームに介入してぶち壊した罰なんだろうか。


 遠い目になっていたら、支えていたアイリスがようやく顔をあげた。


「わ、私とロータスが悪いんです! この方は巻き込まれただけで……! 罰なら私たちが受けますので、この方は離してあげて下さい……!」

「え、あの、私、貴方に散々怒鳴り散らかして、貴方の友達……? を蹴り飛ばしちゃったんだけど……」

「それは私とロータスが悪かったからです! 貴方の発言は間違ってませんでした。本当にごめんなさい」


 私の手を取って謝ってくれるアイリス。目には涙が浮かんでいる。

 主人公~!

 目の前で攻略対象を蹴り飛ばしたのにこの優しさ! 圧倒的光に目が潰れる。

 この子の未来という名のゲームを邪魔したことに、今更心が痛み始めた。


「うっこちらこそ……ごめんなさい……」

「ふふ、謝罪は蹴っ飛ばしたロータスに言ってくださいね」


 アイリスに少し笑顔が戻る。先ほどまでは逃亡の緊張感もあったのだろう。

 一方ロータスと言えば、兵士に抱えられたまま運ばれている。

 ちゃんと死なないように手加減したから、そのうち目覚めるでしょう。

 主人公で女王陛下のアイリスの言葉で、なんとか離してくれないかな~っと期待を込めて男性を見上げるも、彼は相変わらず悪どい笑みを浮かべたままだ。


「悪いんですけど、どうするか決めるのは俺じゃなくてクロッカス殿下ですので。助けたいなら殿下に言ってください」

「伯父上に……」


 アイリスの顔が曇る。


 クロッカス殿下ってラスボスの名前じゃん。

 ラスボス伯父上に私の所業決められるんですか?

 噂だけでしかしらないけど、平民を無理やり手籠めにしたり、王族や関係者をアイリスと自分以外皆殺しにしたり、親友を殺してその奥さんをNTRした人に??


 ゲームをぶち壊した罰重すぎでは???


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