表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/372

失敗

「本当に出来るんだろうな……?」


 フラックスは疑いの目を向けてくるが、それしか勝機がない。

 それに。


「ブルーアシード様にお母様を攻撃させるわけにはいきませんので、私がやるしかないでしょう?」


 ゲームでは母親だろうがなんだろうが、戦闘が始まればこちらの指示に従って動いて攻撃してくれるキャラクター達。

 でもこれはゲームの仕様が混ざっていても現実でもあるのだ。母親を思う、感情のある人間にそんなことさせたらダメだと思う。


「お前……」

「そういうわけで、そこで応援しててください!」


 言うが早いか『身体強化』を発動してシールドの外に飛び出す。


 さっむ!!


 身を切るような寒さとはこのことだろう。『身体強化』で加速しているから猶更だ。

 しかし院長の教えのお陰で氷に足を取られることはない。


 ありがとう、院長。でもこれやっぱりバグ技なのでは?

 

 湧いた疑問に蓋をして、壁伝いに走ってアネモネから距離を取る。そして加速したまま垂直な壁を二階まで走り抜ける。

 壁まで凍り付いているのでめちゃくちゃ怖かったけど、なんとか二階に到達。アネモネはといえば、あと2・3段で1階に降り立つ所だ。

 しかしこちらの動きには気づかれてない。

 階段にそって加速し、落ちる重力も味方にしてアネモネの後頭部に拳をいれた―――が。

 

 硬っ!?


 私の一撃はアネモネに届く前に防がれた。

 よく見ればアネモネは透明な氷の鎧のようなものを纏っている。私の一撃で鎧は砕けたが、壊れた所からすぐに再生されていく。


 ゲームじゃなかったんですけど!?


 しかも鎧の再生が早いせいで、殴った腕ごと氷に包まれそうになる。

 まずい、このままだと私も氷漬けにされるのでは?

 そう思った矢先、私と鎧の間に水を纏った矢が飛んできた。再生される鎧はまだ脆かったのだろうか、私の腕が氷に包まれる前に鎧を砕く。しかしそれも一瞬だ。すぐに鎧の再生が始まる。

 それを見逃さずに腕を引っこ抜いて最大限加速して距離を取る。

 具体的に言うと、フラックスのいた場所に戻ってきた。フラックスは水で形成された弓を構えている。

 そういえばフラックスは弓使いだったな。

 しかし腕と鎧の間を通すように矢を当てるとか神業かよ。下手したら私か母親にあたるのに、どちらにも当たらないように考慮されていた。

 流石、攻略対象。優秀。


「ごめんなさい! 失敗しました! そしてありがとうございます!」


 大見え切った割に失敗した挙句、助けられてしまった。恥ずかしい。

 しかしそれをなじるでもなく、フラックスは冷静に私を見た。


「お前、手加減していただろう」

「うっ……だって細そうな手足とか折れそうな首元とか、間近で見てしまって『殴ったらそのまま死ぬのでは?』と思いまして......」


 前は蜘蛛だったからまだ良かった。今回は人相手である。

 息子の前で母親を殺すなんて事したくない。

 

 その結果失敗したんですけどね! 目も当てられない。


「お前は……優しいというか、詰めが甘いな」


 フラックスが皮肉げに笑う。

 その顔がどこか優しそうな笑みに見えるのは気のせいだな、うん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ