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犬も歩けば棒に当たる

 私と顔を合わせたフラックスはあからさまに顔を顰めた。


「なんだ、またお前か。どうしてこんな所にいる」


 それ、こっちのセリフなんですけど。なんでこんな所にいるんだ。

 相手はお貴族様なのでそんなこと言わないけど。


「アンバーに用事がありました。今は帰るところです」


 最低限の礼を取って答える私をフラックスは鼻で笑う。

 

「殿下に媚びを売ってきたところじゃないのか? こんな所にまで通してもらえるなんて、随分な気に入られようだ」

「違います。ブルーアシード様は殿下に何かご用件があるのでは?」


 だから早く行ってくれないかな、という意味を込めてフラックスを見つめると、彼は苦い顔になった。


「お前には関係ないだろう。……どうせ、取り次いでももらえない」


 父親の件だろうか。

 アンバーに笑顔で拒否されて追い返されるのが目に浮かぶ。

 だからって私にあたるな。


「……ひょっとして、殿下にも私どもと同じ態度で接してますか?」

「そうだが?」


 片眉をあげて私を見るフラックスに呆れる。

 これもう言い返していいかな。

 相手は貴族とはいえ、爵位は取り上げられて領地もない。近衛騎士団のマゼンダ団長の態度を見ても、あまり貴族間でも好かれてないだろう。事実はどうあれ王族に反乱を起こした逆臣の息子だ。

 とはいえ攻略対象。将来的にロータスが近衛騎士団団長になってることを考えると、この人は宰相にでもなるのだろう。後が怖いので、最低限論理的に、穏便に言い返そう。


「なんでブルーアシード様は殺されてないんですか?」

「は?」

「国一番の権力者に立てついて、よく無事ですね。自分を恨んでいるだろう不穏分子がそんな態度だったら始末されてもおかしくないと思います」


 言い返されたことに余程驚いたのだろう。数秒固まった後に怒鳴り返してきた。


「俺はブルーアシード家の跡取りだ。殺したとなれば他の貴族たちだって黙っていない!」

「事故か病死にして、血の繋がってる他の家から任命すればいいだけです。それともブルーアシード家の血筋って貴方様しかいないんですか?」

「……いや」

「侯爵なんて、欲しがる所沢山あるでしょう? 血族なら猶更です。殿下にお近づきになりたい貴族だって多いはずです」


 悪名高いとはいえクロッカス殿下は最高権力者だ。甘い汁吸いたい輩は山ほどいるだろう。

 なんで私でも思いつくことが、この人は思いつかないんだ。

 いや、違うな。殿下への憎しみで視野が狭まってるんだろう。まだ十代だし仕方ないことだ。


「殿下を憎むのはいいですけど、それで視野が狭まってるのは良くないと思いますよ。殿下に聞き出すにしても、証拠を集めるとか、貴族間の繋がりを持って答えさせざるを得ない状況を作るとかしないと無理だと思います」


 これでまだ子どもの駄々をこねるようなこと言ってきたら、それこそ暴力で言い聞かせるしかないと思う。

 私は後が怖いのでやらないけど。

 それはそうと、フラックスがあまりにも黙り込んだままなので、そっと距離を詰めて様子を伺う。


 ……なんか泣いてない?


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