表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

370/372

努力

 センチメンタルに浸っていられたのは、目が覚めた日だけだった。

 次の日から地獄のリハビリが始まったので、それどころじゃなくなった。


 そりゃ二ヶ月も寝てたら筋力が落ちるよね……。


 腕は筋力が落ちているだけ、声が出なかったのも二か月以上も喋ってなかったせいで、慣れたら普通に喋れるようにはなった。

 ただ、足はどうしようもない。

 バッキバキに骨が折れたんだろうな……という手術痕と、思うように動かない足が事故の激しさを物語っている。


 これは葵が『虹の女神』にお願いしてなければ死んでたな。生きてるだけ感謝しよう。


 兎にも角にもリハビリが必要だ。

 それで元通りに足が動くようになるかはわからない、とはお医者さんにも言われた。

 でも家族も支えてくれるし、叔父さんたちもちょくちょくお見舞いにきて励ましてくれたし、私は私の出来る事をやるしかない。

 向こうの世界でも、私だけ属性魔法が使えなかったけど、腐らずに訓練してたおかげで生き残れたわけだし。

 努力してもどうにもならない事はあるけど、努力した時間や経験は無駄になるわけじゃない。

 向こうの世界の経験があるから、今も自暴自棄にならずにいられる。


 そう思うと、やっぱり院長に逢いたいなぁ。色々教えてくれたのに、何のお礼も出来なかった。


 リハビリ以外は基本的に入院中は暇なので、つい向こうの世界の事を考えてしまう。

 考えても私にはどうしようもできないんだけど。

 しかし私のスマホも事故で壊れてしまったので、暇だと完全に手持ち無沙汰になって、向こうの世界の皆の事を考えてしまう。

 考えていてもモブの私を『虹の女神』が助けてくれるわけでもない。

 仕方がないので、葵に私のゲーム機を持ってきてもらった。ただの暇潰しだけど、ウジウジ考えるよりは気分がマシになるだろう。

 仕事をし始めてから全く起動してなかった。久しぶりに遊ぶなぁ。

 そんな事を思いながら電源ボタンを押す。

 ……点かない。

 何度電源ボタンを押しても、画面は暗いままだ。


 一年くらい遊んでなかったから、壊れちゃったかな?


 ため息をつきながら暗い画面を見つめていると、突如真っ暗な画面に金色の瞳が映り込んだ。

 カッと目を見開いた眼差しが、私を捉える。


 『ミ ツ ケ タ』


 耳に響く声と共に、こちらに向けて手が伸びてくる。ゲームの液晶画面にバチバチと暗い火花が踊った。

 やがて画面の中心からぬっと白い腕が飛び出してきて、私の腕を掴まえた。


 普通、恐怖するところだが、生憎私はこういう事をする人に覚えがある。とっても。


 私は特に抵抗せずに、彼の腕を掴んでゲームの液晶画面にダイブした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ