オマケ
私は改めて葵に尋ねてみた。
「モブ君だった記憶あるの?」
「もちろん。お姉ちゃんもスノウの身体にいた記憶あるんだね」
私がスノウと身体を共有してた事まで覚えてるんなら、葵の言葉に疑いようがない。
私は改めて葵を見つめた。
「ありがとう、葵。葵が『虹の女神』に私を助けて欲しいってお願いしたから、こっちに帰ってこれたよ」
私の言葉に、葵が泣きそうな顔になる。
「ううん。ごめんね、お姉ちゃん。私がお姉ちゃんを『助ける』なんて曖昧なお願いしたから、お姉ちゃんが起きても辛そうだし……。傷。痛いでしょ?」
そうか、葵は私の容態を心配してたのか。ついでに『虹の女神』にちゃんと私の事を頼めばよかったと後悔してたんだ。
でも、それは『虹の女神』が悪くない?
頑張ったんだから、少しくらいオマケしてくれても良いじゃん。奇跡的に怪我を負わなかったとか、起きて見たら怪我が全部治ってるとか。
でも契約しただけの関係なんて、そんな物か。相手は神様だしな。契約内容以上は関与しませんってか。
世知辛い世の中だ。
遠い目をしながら『虹の女神』を恨んでいたら、葵がふふふと笑い出した。
どうやらあの指輪をしていると、考えていることも葵に筒抜けのようだ。
おかげで葵は私が怒っていないことが分かったみたいだ。
葵はようやくいつもの笑顔を見せてくれた。
私も葵が自分を責めるのは本意ではないので、わだかまりが解けてホッとする。
ちょうど話題が『虹の女神』になったので、ついでに『虹の女神』への不満をぶちまけておこう。
「でも急にこっちに帰さなくても良くない? お別れの挨拶も出来なかったんだけど」
「え? 私はちゃんとお別れの挨拶する時間をくれたよ?」
葵はきょとんとした顔で私を見つめた。
なんだと?
「虹の女神さまから『ウィスタリアが救われたので、約束通り葵も世界に戻します。お別れを伝え終わったら言ってください』って言うから、ちゃんとアイリスとお別れしてきたんだ」
そういう葵の顔には、切なさと愛しさと寂しさがないまぜになったような、二度と逢えない初恋の人を思い出すような切ない顔をしている。
アニメの最終回みたいに、良い感じのお別れをしてきたに違いない。
どんなに離れていても、きっとまた逢えると信じてる。そういうお別れをしてきたんだろう。
主人公とヒロインかよ。
私はあくまでオマケって事ね。問答無用だったもん。
なんなら院長が消える・消えないでワチャワチャしてた時間が、葵とアイリスのお別れの時間だったんだろう。
何とか院長が消えないように短時間で解決出来て良かった。
スノウは悪役令嬢だったけど、中身の私はモブなんだな……。
改めて姉妹間の格差に遠い目をしていると、葵が困った顔で私に声をかけてきた。
「でも、お姉ちゃんは『雪の妖精』に騙されて、スノウの身体に入れられてたって『虹の女神』さまが帰る時に言ってたよ。それも考慮してじゃないかな?」
な ん だ と !?




