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反省

 『虹の女神』が去ると、地下は元の薄暗い景色に戻った。

 皆で『虹の女神』が去った天井を眺めていたが、ようやく一息ついて肩の力を抜く。


「終わったか」


 グレイがそう呟いて、ようやく剣から手を離す。

 グレイはウィスタリアが正気に戻った後も、ずっと警戒してたんだよね。

 クロッカス殿下や私にウィスタリアが危害を加えようとしたら、真っ先に攻撃するつもりで構えていた。


 恐れ知らずにも程がある。相手は神様だぞ。


 ウィスタリアはそんなグレイを気にしてもいなかったけど。

 たかが人間なんて気にも留めなかったのか、グレイの警戒に気づいていなかったのか。

 なんにせよ、何事もなく解決して良かった。

 私と院長は、今だに座り込んでいるクロッカス殿下の元に向かった。

 私が殿下に声をかけるより先に、院長が殿下に向かって目くじらを立てて声を荒げた。


「あんな無茶しないで下さい。どれだけ心配したと思ってるんですか!」


 殿下はキョトンとした顔で院長を見上げている。

 そんなに心配されるなんて思ってなかった顔だ。

 そういえば、殿下は院長に嫌われてると思ってるんだった。そんな訳ないのに。

 ついでとばかりに私も殿下に苦言を呈しておく。


「そうですよ。院長なんて、闇堕ちしそうになってて大変だったんですからね」

「サクラ! それは言わなくて良いって!」


 院長が焦ったように私の口を塞ぐ。

 殿下を助ける為に、呪いを振り撒くウィスタリアを解放しようとした人が何を言ってるんだ。殿下に知られたら怒られるから黙ってて欲しいんだろう。


 おねしょを隠す子どもじゃないんだから、大人しく怒られなさい。


 そんな意図を込めてジト目で院長を睨んでいたら、クロッカス殿下が困ったような、けれど少し嬉しそうな表情で口を開いた。


「心配をかけてすまなかった。だが、お前たちならどんな困難もどうにか出来ると信じていた。……特にサクラなら、オレの事もきっと助けてくれるだろうとな」


 そう言って殿下は私を見つめた。

 その瞳には信頼が満ちている。

 私は殿下の穏やかな顔を見てーーーとりあえずその頬を殴り飛ばした。


「だからってスノウを泣かせるな!!」


 幼女を悲しませる奴は許さない。

 予想外の拳を受けて地面に倒れ込んだ殿下を、私は仁王立ちで見下ろす。


「スノウがどれだけ傷ついたと思ってるんですか! 周りのためにも、もっと自分を大事にして下さい!」


 私の横で、グレイも院長も同意するように頷いている。

 グレイも院長も、私の拳くらい止められただろうに、黙認されたって事は同じくらい殿下の事を殴りたかったんだろうな。部下だから手出ししないだけだ。

 一方のクロッカス殿下は頬を押さえながら上体を起こした。

 とてもしょんぼりとした表情だ。

 その顔のまま、殿下は私に……いや、スノウに手を伸ばす。


「また泣かせてしまったのか、スノウ。悪い父親で、すまない」

「お父様……。もうこんな事、しないでください」


 スノウに懇願されて、クロッカス殿下は申し訳なさそうな顔で頷いた。


「わかった。約束する。もうしないよ」


 その言葉に安心したのか、スノウは泣きながら殿下の胸に飛び込んだ。


 今度殿下がスノウを泣かせたら、院長に本気で殴ってもらうからね。

 地平線の果てまで吹っ飛ぶだろうけど、殿下なら大丈夫だろう。ラスボスだし。


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