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子孫

 天井を見つめていたウィスタリアが、目の前にいた私に視線を向ける。

 紫の髪、紫の瞳。主人公のアイリスと同じ色だ。

 ただ、顔はアイリスに似ていない。どちらかと言えば、クロッカス殿下……エンディミオンの方が似ている気がする。

 ウィスタリアは華が咲いたような笑みを浮かべた。


「貴女もありがとう。彼らの想いを届けてくれて。名前を伺っても良いかしら」

「桜です」

「桜……良い名前ね。そちらの小さな子は?」


 ウィスタリアは噛み締めるように私の名前を呟いた後、私の内に視線を向けた。

 スノウがいるのが、ウィスタリアにもわかるみたいだ。流石、神を名乗る存在だ。

 スノウはオドオドしながら口を開いた。


『スノウです』

「スノウ。エンディミオンの子ね。初めまして、可愛い孫だこと」


 スノウはウィスタリアに優しく頭を撫でられて、照れて恥ずかしがっている。

 孫どころか遥かに遠い子孫なんだけど。

 ウィスタリアがおかしな勘違いをしている事に疑問を感じている間に、ウィスタリアは私に白い杖を差し出してきた。


「これはお返しするわね、桜」


 肉塊の彼らの声を伝える為に、ウィスタリアに渡した杖だ。


 正直言っていらない。


 人骨の杖は持ちたくないんです。

 肉塊の彼らも成仏(?)したみたいだし、ウィスタリアが持ってってくれないかな。

 しかしこの杖が肉塊になった彼らの骨だとウィスタリアが気づいて、また凶行状態に陥ってはたまったものではない。

 考えあぐねた挙句、私は引き攣り笑いを浮かべてウィスタリアに向き直る。


「その杖は……その、彼らの想いを伝える物なので……貴女様が持っていた方がよろしいかと……」

「私は十分に彼らから想いを受け取ったわ。この杖に残っているのは、彼らの貴女への感謝よ。持っているだけで、彼らが守ってくれるわ。だから桜が持っていて」


 そう言って、ウィスタリアは笑顔で白い杖を私の手に乗せた。


 聞こえは良いけど、やっぱり装備解除不可能な呪いのアイテムじゃないか……?


 一瞬、遠い目になりかけたが、目の前には笑顔のウィスタリアがいる。

 彼女は善意で言っているのだ。

 それに肉塊になった彼らも守ってくれると言うなら、受け取っておこう。

 私は笑顔を作って、ありがたく人骨の杖を受け取った。

 グダグダ言って、良い雰囲気をぶち壊したくない。

 私に杖を渡して満足したのか、ウィスタリアはハッとした顔で私の後ろに意識を向けた。


「エンディミオン! 大丈夫!?」


 そう言って駆け出したウィスタリアが向かったのは、クロッカス殿下の元だ。


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