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ラスボスフォーム

 院長の謎行動に、モグラがいきりたつ。


「何を馬鹿な事を……! 魂を喰らうなぞ、輪廻転生の和を邪魔すれば何が起きるかわからんぞ!」


 魂って食べられるの?


 見せない私にはさっぱりだけど、どうもしてはいけない事みたいだ。

 院長は横目でモグラを睨んだ。


「そんなのわかってるよ。でもこうすれば『雪の妖精』の記憶もわかるし、魂の持ち主の魔力も取り込める」


 そう言って院長は目を閉じた。

 変化はすぐだった。

 院長の全身を光が包む。

 

 魔法少女の変身シーンかな?


 しかし光は一秒足らずで収まった。

 変身シーンみたいにクルクル回って見せつけるわけじゃなくて少し安心する。

 目を開いた院長は、少し身長が伸びていた。髪も『雪の妖精』のように足元まで伸びている。

 それに今まで高校生くらいにしか見えなかった院長が、二十歳を過ぎた大人びた顔になっていた。可愛かった顔立ちに、怜悧な美貌が滲んでいる。

 DLCの最後を飾るに相応しい容貌だ。


 ラスボスフォームじゃん。


 驚きもあるが、それ以上に急激な変化に心配になる。


「大丈夫なんですか? 何か、身体に異常が出たりは……」


  私の問いかけに、院長はいつもの笑顔を見せた。


「大丈夫。何も問題ないよ」


 良かった。いつもの院長だ。

 ほっとした私は、院長の呟きを聞き逃した。


「……今はね」

「え? 今、なんて……」


 聞き返そうとした私を遮るように、腕を組んだグレイが院長に問いかけた。


「それで、何かわかったのか?」

「もちろんだよ」


 院長が頷く。

 私の問いかけがなかった事にされているが、きっと大した呟きじゃなかったのだろう。

 それよりもウィスタリアをどうするか考えないと。

 私は院長の話に集中する事にした。


「エンディミオンがあの棺に入っていたのは、ウィスタリアを封印するだけじゃない。エンディミオンはあの棺で眠りながら、ずっとウィスタリアに呼びかけていたんだ」


 『雪の妖精』にウィスタリアを絶対に助けてみせる、と宣言していたエンディミオン。

 その言葉通り、ずっと母親を救おうとしていたのだろう。

 院長は語り続ける。


「長い、長い年月をかけて、徐々にウィスタリアは正気を取り戻していた。……それでも足りなかった。結果的にエンディミオンの寿命が尽きて、ウィスタリアは正気と狂気の狭間にいる」


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