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対立

 惚れ惚れと騎士姿を眺めていたら、後ろから声をかけられた。


「嬢ちゃん? こんな所でどうし―――」


 グレイ隊長の言葉が不自然に途中で止まる。マゼンダ団長と目が合ったからだ。

 そのまま二人は険しい顔つきになって険悪な雰囲気のまま睨み合う。

 最初に口を開いたのはマゼンダ団長だ。


「血の臭いがすると貴様か。貴様がいるべきはここではない。城内を無駄に動き回られても迷惑だ。また私の部下と問題を起こすつもりか?」

「お言葉ですけどね、俺も仕事なんですよ。殿下の命でいるだけです。あと、話しかけてくるのはいつもそちらの騎士サマたちであって俺は問題起こしてないですから」


 私を間に挟んで喧嘩しないでほしい。やるなら他所でやってくれ。巻き込まれたくない。

 そんな願いが届いたのか、怯えてるのが見えたのか、マゼンダ団長がちらりと私を見た。


「この子は貴様の知り合いか」

「そうですよ。お手数おかけして申し訳ないですね。ほら、嬢ちゃん。こっちこいよ」

「え、ちょっと、あの……」


 返答する前にグレイ隊長に捕まり、ほとんど引っ張られるようにその場を後にする。

 暫くそのまま連れられて歩いた後にようやく解放された。

 グレイ隊長は呆れた顔で私を見る。


「嬢ちゃん。また何か巻き込まれたのか?」

「そうなんですけど、今の方に助けてもらいました。近衛騎士団の団長さんなんですよね。仲悪いんですか?」

「……そう、だな……」


 妙に歯切れが悪い返答だ。

 グレイ隊長は思考を纏めるように今歩いてきた道の向こうを見やる。


「近衛騎士団は貴族が中心だ。近衛騎士団の団長も公爵家の末娘で、10年前の反乱の時に幼い女王陛下を命がけで守り抜いて今の職にいる。陛下からしたら親代わりというか、姉のように頼りにされて信任も厚い」


 アイリスの親代わりだったのか。ひょっとしたらゲームにも出てたのかもしれないなぁ。

 女王陛下を支持したい派閥からしたら、権力握ってるクロッカス殿下が一番邪魔だろう。そしてグレイ隊長はクロッカス殿下の側近で、彼を守る騎士でもある。


「俺とあいつはなんていうか……対極にいるからな。昔からお互いに比べられる。特に向こうはお貴族様だ。こんな平民と並べられるなんて耐えられないだろうよ」


 対立する派閥同士で比べられるとなればギスギスするのも仕方ないか。お互いに顔合わせたくない雰囲気だったもんね。


「俺の事より嬢ちゃんだよ。今度はどうしたんだ」


 今までの雰囲気を変えるように、意味ありげに笑ってグレイ隊長が聞いてくる。

 ひょっとして前回の地下探索の話も聞いてるんだろうか。女王陛下の逃亡騒ぎに続いて厄介ごとに巻き込まれてるからなぁ。またか、と思われてもしょうがない。

 とりあえず謎に突っかかってきた青年の話をする。

 今回私は何も悪くないぞ。


「青みがかった銀髪に青い瞳……。殿下に恨みがあって嬢ちゃんのいくつか年上の侯爵家の人間となると、フラックス・ブルーアシード様くらいか?」


 フラックス……。ああ、確かそんな名前の攻略対象いたわ。でもうっすらとしか覚えてない。

 今回は記憶にまったく自信がない。いや、関わる気はないんだけど。

 でも向こうから関わってきた時のために情報は仕入れとくに限る。


「なんであの人はそんなにクロッカス殿下を恨んでるんですか?」


 その問いかけにグレイ隊長は一瞬息を詰まらせたが、私の顔を見て深々と溜息を付きながら口を開いた。


「クロッカス殿下に父親を殺されて、母親は殿下と再婚したから……だろうな」


 NTRの噂は本当だったのか……。

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