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女性騎士

 人違いなら早めに解放されそうだな。

 そう思う私とは反対に、彼は眉を顰める。


「アンバーと話していただろう。クロッカス殿下の下で働いていなければ無視されるのが関の山だ。爵位もないなら猶更な」

「そうですけど……」


 私の返答に彼はあざ笑うかのように鼻で笑う。


「お前みたいな何の実績もない女が入れるようなところじゃない」

「それは……」


 院長の口利きで実現した裏口入学みたいなものなんだけど、これ言ったら余計にこじれる気がする。


「それは私のような下々の者にはわかりかねる事なので、採用した方に伺って下さい」


 私は知らんぞ、上に聞いてくれという態度で一貫しておく。実際、院長が何を考えてクロッカス殿下に私を紹介したのか知らないしね。


「クロッカス殿下もその周りの連中も信用できない。あの側近どもなんて礼節は整えていても貴族であろうと見下している」


 随分とクロッカス殿下とその周囲に恨みがあるようだ。

 その前にこいつは誰なんだ。多分、攻略対象なんだろうけど記憶にない。まったくない。

 ロータスはパッケージに出てたしメインビジュアルでよく描かれてたから知っていた。ジェードは妹の推しなので知識を擦りこまれていたから覚えていたけど、それ以外のメインキャラクラーはあんまり覚えてないんだよね。

 敵役として戦ったキャラの方が覚えてるわ。

 しかし相手はお貴族様。名前を聞くどころか相手の出方を伺うしかない。


「お前も媚びを売るなら別にしておけ。『呪われた王子』の周りにいても不幸になるだけだ」

「ですから、人違いだと……」


 話聞かない奴だな。お貴族様じゃなかったら殴ってる所だった。

 こんな時院長なら……。


『いいかい、サクラ。初対面の印象ですべてが決まるといっても過言ではない。だからね、生意気言ってくる奴は拳で叩きのめして理解させたほうがいいよ?』


 ダメだ。あの人も力で解決するタイプだった。

 話が堂々巡りになりそうで、どうしたものかと思った矢先。


「そこで何をしている」


 凛とした声が響いた。

 

「マゼンダ騎士団長……!」

 彼が呟いて、ようやく私から離れてくれた。ようやく壁から離れられる。

 ほぼ彼しか見えていなかったので、ようやく声の主の姿を見れる。

 白い近衛騎士団の服をきっちりと着こなした女性だった。歳は30歳くらいだろうか。長い金髪に赤い瞳でややきつそうな印象を受けるが、仕事ができる女上司みたいなカッコイイ女性だ。

 しかし近衛騎士団の服で騎士団長って呼ばれてるのはこの人が団長なのか。ゲームだとどのルートでも必ずロータスが近衛騎士団団長に就任するから、その前役という事になる。

 そうだよね、ゲームで描かれなくても重役だから就任してた誰かがいたはずなのだ。

 女性だったとは知らなかったけど。

 マゼンダ団長は私を一瞥すると、彼に冷たい視線を向けた。

 

「侯爵家の跡取りが女遊びとは感心しないな。そんな暇があるなら家の復興に努めたらどうだ」

「……お前に何がわかるって……」

「こんな所で時間を無駄にするような輩の事はわからんな。とっとと去れ」


 きっぱりとマゼンダ団長が告げる。

 私とマゼンダ団長を睨むと足音を立てて去っていった。

 何だったんだ、一体。

 彼が去るとマゼンダ団長が気づかわし気に話しかけてきてくれた。


「大丈夫か? あの男は今気が立っていてな。不快な思いをさせたなら申し訳ない」

「はい、大丈夫です。助けていただいてありがとうございました」

「礼など不要だ」


 お、お姉さま……!


 凛々しい顔から急に優しい笑顔を見せられて、うっかりキュンときてしまった。

 

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