乗馬
「私達も行きます!」
フォーサイシアが身を乗り出し、ネイビーもその隣で同意するようにコクコクと頷いた。
しかしグレイはそれを横目に首を横に振る。
「ダメだ。俺は不器用だからな。守れるのは一人までなんだよ。お前らが嬢ちゃんより強いってんなら連れてっても良いけど、違うだろ?」
グレイの言葉に、フォーサイシアとネイビーが言い返せずに黙り込む。
グレイは昔、リリーさんからスノウを守り切った。本当に一人だけなら守り通せる自信があるのだろう。
そしてフォーサイシアとネイビーは基本的に良い子なので、ここでグレイに無理強いするようなタイプではない。
悔しくそうな二人を安心させるために、私は笑顔を作った。
「心配しないで。危険そうだったら、すぐに引き返すから」
私の言葉に、三人が一斉に黙り込む。
暫くして、フォーサイシアが真面目な顔でグレイを見つめた。
「やっぱり心配なので、後から追いかけます」
「自己責任だからな。俺は忠告したぞ」
グレイはため息をついて、肩を竦めた。
信用されてない。なんでだ。
納得がいかない私を置いて、今後の動きは決まった。
とりあえず私はフォーサイシアとネイビーと別れ、グレイ隊長の部下と連れて来た馬を休ませて、代わりの馬を手配してもらう。
本来なら交渉に時間がかかりそうだが、グレイが頼んだら聖地の警備隊があっさりと馬を貸してくれた。
やっぱり名声って大事。
フォーサイシアとネイビーは教会に移動手段の確保を頼みに行ったので、別行動だ。後からの合流になるだろう。
グレイは借りてきた馬の鞍や手綱を点検しつつ、私に目線だけ向けた。
「今回は馬車じゃなくて、馬に乗って現場に向かう。嬢ちゃんも乗れるだろ」
「もちろんです」
私が頷くと、グレイはフッと笑った。
「アイツが教えてると思ったよ」
グレイのお察しの通り、私は院長に教わったので馬に乗れる。
院長と修行の為に遠出する時、二人乗りだと手間になるし時間もかかるから、私から頼んで乗馬を教えてもらったのだ。
教えてもらった後は、どちらが速く馬を走らせるか競走したりしていた。
院長は負けず嫌いで子どもっぽいので、ガチの勝負である。手加減なんてなかった。
フォーサイシアとネイビーは乗馬が出来ないみたいで、馬車を手配しないといけない。馬車を運転する御者も手配しないといけないから、それでまた時間がかかるだろう。
乗馬を教えてくれてありがとう、院長。おかげでグレイについて行ける。院長には一回も勝てなくって、めちゃくちゃ悔しかったけど。
思い出して歯軋りする私を横目に、グレイは颯爽と馬に跨った。
「よし、行くか」
「あ、はい!」
私も慌てて馬に跨り、二人揃って駆け出した。




