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フラグは絶対立たせない

 しばらくして馬車が止まる。

 辿り着いたのは、丘の上にある三角屋根の教会だ。

 この教会の形、前世で見たような気がするんだけど……。

 ゲームのままなのか、ゲームを作った人の意識が流入しているのか、判断に困るところだ。

 葵がいてくれたらわかったんだけど、いない者は仕方がない。

 とにかく、アメトリンにいる間はこの教会の紹介してくれた宿屋で厄介になるので、教会の方々に挨拶する。

 ここの神父さんは髭をたくわえたイケオジだった。やっぱりこの世界、イケメンが多い。

 私たちとの挨拶はそこそこに、髭のイケオジはフォーサイシアと話したそうだったので、空気を読んで席を立つ。


「フォー、私たちは外を見てるね」

「ええ、私も仕事が終わったら、すぐに向かいます。兄さん、何かあったら呼んでください」

「うん!」


 ネイビーが笑顔で頷き合い、フォーサイシアは教会の奥に消えて行った。

 フォーサイシアを見送って、私たちも温かみのある木製の教会から出る。

 外は日も傾いて、薄暗くなってきていた。肌寒い風が頬を撫でる。


「嬢ちゃんもネイビーも、長旅で疲れただろう。今日は休んで、調査は明日だな」


 荷物を持ったグレイが話しかけてくる。

 私は今出てきた教会を振り返った。


「フォーが仕事してるのに、私たちだけ先に休むのも悪い気がして……」

「仕方ないだろ。フォーサイシアは今、ウィスタリア王国の教会で引っ張りだこだからな。おかげで嬢ちゃんもアメトリンに来れたんだ。得したと思おうぜ」


 グレイも一緒になって、フォーサイシアの残った教会を見上げる。


「フォーサイシアとネイビーの父親が失脚したから、教皇を決める日も近い。教会の連中も、誰が教皇になるのか気になってるんだろ。フォーサイシアは若手で聞きやすいから、色々な所から呼ばれて大変だろうけどな」


 教皇は、教会のお偉いさんたちーーー枢機卿による投票で決まる。

 普通は枢機卿の中から選ばれるけど、今回は二人の父親が事件を起こしたり、フォーサイシアがアイリスと親しくしてたりと色々イレギュラーが重なっている。

 そう考えると、フォーサイシアはゲーム通り、教皇になるのかも知れない。

 枢機卿ではない教会の人たちもそう思っているから、フォーサイシアに挨拶したり、事情を聴いたりしたいのだろう。

 そんな忙しいフォーサイシアに、封じられたウィスタリアの話とかしてしまった。

 教会は虹の女神が第一だけど、ウィスタリア王国はウィスタリアと雪の妖精も信仰している。

 フォーサイシアにはショッキングな話だったはずなのに、あんなに真面目に聴いて対応してくれたのだ。

 今になって申し訳なさと後悔に苛まれていると、ネイビーが視界に割って入ってきた。


「フォー、旅、楽しみだ! サクラ、いるから!」

「フォー、今回の旅を楽しみにしてくれてた?」

「うん!」


 真剣な顔のネイビーに言われては納得するしかない。

 フォーサイシアが楽しみにしていてくれたなら、忙しい彼が羽を伸ばせるようにしたい。

 私もここにいる間は調査だけじゃなくて、双子と一緒に楽しめるように過ごそう。

 それがアメトリンに連れてきてくれた、フォーサイシアとネイビーへのお返しだ。

 そう決意して、私はネイビーの顔をしっかり見つめて笑った。


「そうだね。私も二人と一緒に楽しむ事にするよ」

「うん!」


 ネイビーは嬉しそうに笑う。

 その横でグレイもふっと笑った。


「……フォーサイシアの場合、嬢ちゃんを独り占め……いや、兄と二人占め……? 出来るから楽しみにしてたんだと思うけどな……」


 王都だと色々邪魔が入るし、とグレイは更に付け加える。

 そこまで言われては、私も照れるしかない。


「フォーがそう思ってくれてるなら、それは……嬉しいですね」

「えっ」


 何故かグレイが信じられない物を見たような顔をする。

 私が照れるのがそんなに意外なのか。失礼だな。


「家族並みに親しい友達だと思ってくれたんですね!」


 これは正しく親友と言っても良いのでは!?


 喜ぶ私に、グレイは哀愁漂う謎の笑みを浮かべた。


「嬢ちゃんはそうだよな……」


 え? 攻略対象の親友ポジションはおこがましかった?


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