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組織改革

 ゲームの知識がない私には、これがDLCであったことなのか、違うのか判断が付かない。また葵に相談しないと。

 私が頭を悩ませていると、院長が憂鬱な顔でため息をついた。


「せっかくサクラもスノウも面倒な役割から解放出来ると思ったのに。上手くいかないね」

「どういうことですか?」


 いきなり私やスノウの話が出てきて驚いた。

 目を瞬かせる私に、院長は真面目な顔で視線を合わせた。


「『王の影』の事だよ。『雪の妖精』が封印を守っているから、子孫のボクらも封印を隠したり、ウィスタリアの血族が途絶えないように守ったりしてたんだ。ウィスタリアの血族を守るのは、王家を守るのと同じだから、反乱や反抗を事前に察知できるように組織された諜報機関だね」


 そうか。『雪の妖精』の子孫が経営してるけど、長になれるのはどうも『雪の妖精』の特徴を持った人間が選出される。

 それを考えると次は私―――というか、スノウだ。


「今まで何度か話に出てましたよね。それが変わるって事ですか?」

「封印がなくなったら『雪の妖精』も解放されるだろうし、わざわざボクらがやらなくても、王家主導で組織を動かしてくれればいい。そうすればサクラもスノウも、わざわざ『王の影』に関わらなくて良くなる」


 院長は私やスノウが『王の影』に関わるのは否定的だ。

 血なまぐさいこともやっているのをヒシヒシと感じるから、それ自体は私としてはありがたいんだけど。

 スノウだってまだ5歳だし、何よりクロッカス殿下の娘で王家の血を引くお姫様だ。私としても、血なまぐさいことには関わらずに幸せになってほしい。


「いきなり組織を放り投げても困るだろうから、ボクは引継ぎが終わるまではちゃんとやるし、最後まで責任を持てって言うならボクが動かしてても良いけど……ボクの代で終わらせるならそれがいいし、後はやりたい人間がやれば良い」


 そう言って院長は話を締めた。

 王家主導の組織化。それがいいかもしれない。

 裏で密かに動いているから、パワハラが横行して組織内で人殺しが許容されたり、暗殺が依頼されたりするのだ。

 せめてFBIやCIAみたいに表立って組織されていれば、非合法な事もやりにくくなる。どちらかといえば、公安みたいになればいいんじゃないかと思う。

 クロッカス殿下と院長がいて、女王が温和なアイリスなら新しい組織として一新しても上手くいきそうだ。

 しかし私としてはもう一つ気になる点があった。


「そうすると、孤児院はどうなりますか?」


 魔法が使える子たちが集められた孤児院。

 あれだって必要な物だ。

 なんせ魔法を使えるってだけで人が凶器になりうる。

 魔法が使えない親が育てるのも大変だ。ただでさえ子どもを育てるのにお金と労力がかかる。魔法が使えると、その子が泣いたり笑ったりするだけで家が火事になりかねないのだ。

 普通の家なら破産しかねない。

 魔法を制御する方法だって、魔法が使える人じゃないと教えられないのに、その魔法が使える人間が少ない。

 あの孤児院は子どもを買い取って連れてきてるらしいけど、そんな事をしなくても魔法が制御できるまで一時的に預かるとか、魔法が使えたほうが就職に有利とか、国で大々的に広めたらもう少し子どもの扱いもマシになると思う。

 それを訴えると、院長が微笑んだ。


「気になるなら、サクラがそれだけ引き継ぐ? サクラは子どもの面倒を見るのが好きだったもんね」


 『王の影』という国の為に神経をとがらせて、知略も必要そうな組織経営は絶対に無理だけど、孤児院の―――子ども達の為なら、まだやれる気がする。

 それに『王の影』が公安やFBIのような表立った組織になったら、国を守るという意味で志の高い子が目指してくれるかもしれない。


「はい、そうしたいです。……それも、ウィスタリアを助けられたらですけど」

「そうだね」


 すべては上手くいった場合の、空想の話だ。

 夢を語るのもいいけど、私たちはまだ何も解決できていない。問題が山積みだ。

 私はもう一度院長を見上げた。


「あの、今回の件、ジェードにも手伝ってもらっていいですか?」


 ジェードも攻略対象だ。

 『王の影』にある資料は院長が大体知っていると言っていた。だけど、『攻略対象』じゃないと発見できない何かがあるかもしれない。

 なんせウィスタリアの封印があるのは『王の影』の最深部だ。何か手がかりが残されていてもおかしくない。

 院長は私の言葉にすぐに頷いてくれた。


「いいよ。どこまでジェードに話すかはサクラに任せる」


 そのまま院長は真剣な顔で私を見つめた。


「だから選ぶならフラックスよりジェードにして」


 何の話???


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