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考察もフラグも全部折る

「サクラが孤児院に来たのって10年前だよね?」

「うん、そうだよ。ジェードもその後すぐに来たよね。それがどうしたの?」


 絶句していたジェードが何かに気づいた顔で急に尋ねてきた。

 急な話の転換に私がついていけていない中、アンバーが思案顔で続ける。


「10年前は丁度、王都で騎士団の反乱が起こって王族も多く犠牲になりました。それから各地で王位継承権と後見の座を巡って各地で争いが多発しましたからね。貴方方の年代の孤児は多い方です。孤児院に預けられたなら幸運な方ですよ」


 魔法が使えなかったらスラムで野垂れ死にしてたかもしれないってことか。そう考えると『王の影』経営で魔法も勉強も教えてくれたあの孤児院は破格の対応だったのかもしれない。


「サクラは孤児院に来る前はどこにいたの?」

「その反乱が起きた直後に孤児院に預けられたらしいんだけど、記憶喪失になってて両親の事も自分の名前も全部忘れちゃってたんだよね!」

「「…………」」

「わざわざ院長が『ボクが預かった』って言ってたから両親の事知ってると思ったんだけど、何も話してくれないし勉強も忙しかったからすっかり忘れてたわ」


 ま、モブだから大した話もなくて院長も忘れてたんだろうな。

 そう思ってジェードとアンバーを見る。

 なんで二人そろって頭抱えてるんだ。わけがわからないよ。

 

「あの人がサクラを守ってるのって……王ぞ……」

「止めなさい、ジェード。下手したら私たちが消されますよ」

「わかってるよ。アンバーこそ漏らさないでよ」

「誰に言ってるんですか」


 私が話に置いていかれている内に二人で話が済んでしまったようだ。

 なんなんだ。

 困惑していたらアンバーがこちらに向き直る。


「いつまでもこんな所にいるのも嫌でしょう? 地上に戻りましょう」

「……それもそうですね」


 納得いかないけど話は済んだとばかりにアンバーもジェードも歩き出してしまった。仕方ないので二人の後ろに付いていく。

 アンバーを先頭に先ほど走り抜けてきた通路を戻っていく。先に進めば出られると思ったんだけど、どうやら違ったらしい。

 確かにチュートリアルの通路ってこんなに長くなかったもんね。一本道のはずなのにどこをどう間違えたのやら。

 走っていた感覚的に結構距離もあるはずなので、気になっていたことをアンバーに尋ねてみた。


「アンバーって『王の影』なのに、なんでクロッカス殿下に仕えてるんですか?」


 正直答えてくれないと思ったけど、以外にも彼は口を開いてくれた。


「私は元々『第一王子が王家や国に反抗を企てるようなら殺せ』と命じられてクロッカス殿下の元にいただけですよ。グレイと違って殿下への忠誠心があるわけではありません。殿下に重用していただいているのは私の実力ですけどね」


 確か側室生まれのクロッカス殿下と、正室生まれの第二王子であるアイリスの父親とで色々あったって話だもんな。ドロドロしてるわ。

 そこにジェードが横やりを入れてきた。


「でも10年前の反乱だって裏で糸引いてたのはクロッカス殿下だって有名じゃないか。それにアンバーだってクロッカス殿下に『王の影』の情報を横流ししてるって噂聞いてるけど?」

「どちらも噂ですよ。私もクロッカス殿下も国の為に働いているのに、そんなことを言われるのは心外ですね」


 にっこりと胡散臭い笑みを浮かべるアンバー。クロッカス殿下はそうかもしれないけど、アンバーが本当にそうか疑問が湧くのはそういう胡散臭い所だぞ。


「そもそも『殺せ』という命令は撤回されていませんので、何かあれば私はためらいなく殿下を殺しますよ。あの方がしくじりを許容しないのは知っているでしょう? ジェード」


 その言葉にジェードが悔し気に黙り込む。今回の件で思い知らされたからだろう。

 しかしそれが本当ならクロッカス殿下は何もしていないのに噂だけ一人歩きしてることになる。

 昔からだったとは。ちょっと可哀想になってきた。


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