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水面下で起こる異常

 疑問しか浮かばないけど、アンバーに手を引かれるまま執務室を退室した。

 クロッカス殿下が最後まで苦笑して見送ってくれたのが印象的だった。

 そのままアンバー……院長に手を引かれたまま、城の中を歩く。流石に恥ずかしいので手を離そうとしたが、作り笑顔でやんわりと手を握られて拒否された。


 なんでだよ。院長にとっては、私もスノウと同じ5歳児に見えてるんだろうか。


 幸い、歩いている間は周りからは見向きもされなかった。院長が魔法を使っているのだろう。

 そんな事に魔法を使うくらいなら、手を離して歩けば良いのに……と思っている間に、再び『影』の隠し部屋までやってきた。私が葵と話すのに使わせてもらった部屋である。

 部屋に入った途端、院長が指を鳴らす。

 それだけで防音と透視予防の障壁が部屋に張られた。流石である。

 それからようやく院長が眼鏡を外す。執事のアンバーから、いつものフェアリーフェイスの院長に早替わりである。

 院長はその妖精のような顔を歪ませて、腕を組んだまま仁王立ちした。


「サクラ。軽率に男に手を握られたりしたらダメだよ。単純な奴は勘違いするんだから、気をつけてよね」

「院長だって手を握ってきたじゃないですか」

「ボクは保護者だから良いの!! 邪な感情なんてないから!」


 呆れてたら強めに言い返された。

 心配し過ぎじゃないだろうか。クロッカス殿下が苦笑するのも納得である。

 私はため息をついて院長を睨みつけた。


「フラックスが勘違いするわけないじゃないですか。文句を言う為だけに連れてきたなら帰りますよ」


 フラックスは今までの汚名を払拭するがごとく、アイリスの下で頭角を表して次期宰相候補と名高い。

 おかげで貴族の娘さんや、玉の輿を狙う子たちがフラックスの周りに集まってキャアキャアしているのをよく見る。そんな、よりどりみどりの中で私なんて目に入らないだろう。

 院長は保護者として私にフィルターがかかっているから、変な心配をするのだ。

 私はリリーさんと違ってモテないぞ。

 しかし院長は何故か頭を抱えてブツブツ言っている。


「……親子揃って鈍いんだから……殿下に似てるせいで……」

「なんて?」


 よく聞こえなかったけど、まだ文句があるのだろうか。

 しかし、今聞きたいのは文句ではない。


「院長、『雪の妖精』に話を聞きに行ったんじゃないんですか? なにかわかりましたか?」


 ウィスタリアの闇堕ちの原因がなにか、昔話を聞きに行ったはずだ。

 『雪の妖精』はスノウを助けてくれた。だから、今回も助けてくれるんじゃないかと思っていた。

 けれど顔をあげた院長の憂鬱そうな表情を見て、話はそう上手くはいかないと悟った。


「それが……『雪の妖精』から話を聞けなかったんだ」


 居住まいを正した院長が、申し訳なさそうに答える。

 院長の態度から、単純に話を断られた様子でもない。話を断られたら、院長はもっとキレちらかしている。

 私は困惑したまま、再度院長に問うた。


「なにか問題でもあったんですか?」

「わからない。話かけても応答がなかったんだ。いつもなら、聞いてもない事を話してきて鬱陶しいくらいなのに……」


 困惑とも心配とも取れる院長の表情に、私の心に影がさす。


 ひょっとしてDLCに向けて私が行動し始めてしまったから、物語が進んだ扱いでウィスタリアや雪の妖精に異常が起き始めてる……?


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