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 フラックスの協力を取り付けられたので、安心して帰ろうと思ったらフラックスが私の手を握ったまま笑顔で提案してきた。


「また俺の家で食事会でもどうだ? この後は帰るだけだろう」

「それはいいな。オ……私も出席しよう」


 クロッカス殿下まで乗り気で頷く。

 良くない。全然良くない。

 また王族と貴族の前でテーブルマナーを気にして食べないといけないんですか!?

 しかしそう思っているのは私だけだ。


『お父様とお食事? やった~!』


 スノウは無邪気に喜んでいる。ここで断るとスノウが悲しむだろう。幼女を悲しませるわけにはいかない。

 食べる時だけスノウと交代してもいいかな? スノウなら幼くてもテーブルマナーは完璧そうな気がする。

 意を決してスノウと交渉に入ろうとしたところに、突然扉が開いた。


「それは困ります。こんな時間に急に食事会だなんて、言い出さないで下さい」


 眼鏡を直しながらアンバーが入ってきた。顔は笑顔だが、目が笑っていない。

 それはそうだ。もう日も暮れた時間帯に、急にコース料理をセッティングしろと言われたらキレる。

 アンバーはそのまま私に目をやった。

 私とフラックスが手を取っているのを見て、微妙に笑顔が引きつった気がする。


「それにサクラさんには私から別の話があるので、食事会はまた今度にしてください」


 院長~!

 最高の助け舟である。

 でも『また今度』か。憂鬱だけど延期になっただけでも良しとしよう。

 しかしフラックスは不服そうな顔をする。


「何の用事だ。ここで話せばいいんだろう」

「申し訳ありません。ブルーアシード様にお聞かせする話ではございませんので、私どもは失礼させていただきます。……サクラさん、こちらに」


 完全に作った笑顔のアンバーが、私に向けて手を差し出す。

 話って言うのは『雪の妖精』から聞いた話だろう。フラックスがいては話すことが出来ない。

 流石にアンバーが『影』……というか院長含む『雪の妖精』の末裔が『王の影』の長をやっている事まではフラックスに伝えていない。

 『影』の事は院長が取り仕切っているから、院長の許可がない限りクロッカス殿下も安易にばらさないからだ。

 事情を知らないフラックスは不満な顔を隠そうともしない。

 そんなに食事会をしたかったのか。ちょっと申し訳なくなってきたので、流石にフォローに入る。


「また今度にしましょう。その……私もちゃんと準備をしてから食事会をしたいので……」


 テーブルマナーの復習とか、TPOに合わせた化粧とか諸々準備したい。

 私の切実な願いが顔に出ていたのか、フラックスも申し訳なさそうな顔になる。


「そうだな。女性は準備が大変だから……。こちらこそ、急に悪かった」

「いいえ、こちらこそすみません」


 なんか良い感じに勘違いしてくれた。助かる。

 ではまた今度という事で、私はそそくさと逃げるように立ち上がってフラックスの代わりにアンバーの手を取った。


 途端にアンバーがフラックスに対してドヤ顔になった気がする。

 なんでだよ。

 フラックスもなんで若干悔しそうな顔してるんだ。グレイを見ろ。呆れてるじゃん。


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