チュートリアルからゲームを終了したら罰が当たりました〜悪役令嬢らしいけど、暴力で全てを乗り切ります〜
同じモブ同士だと思っていたモブ君が妹だった上に、主人公みたいな活躍をしていた。
私なんて10年間で勉強と修行しかしてないよ。
モブは私だけだったようだ。
再び黄昏れていたら、葵はまたもやムッとした顔をした。
「私はお姉ちゃんが主人公みたいって思ってたんだよ? なんせお姉ちゃんは、悪役令嬢に転生してるからね!」
「待って? 悪役令嬢だったの!? モブじゃなくて!?」
驚愕する私に、葵は芝居がかったようにやれやれと肩をすくめた。
「お姉ちゃん。ラスボスの娘なんて肩書き、どう考えてもゲームの重要人物じゃん。物語を俯瞰して見たらわかるでしょ」
今更知る衝撃の真実。
それはそれとして、探偵みたいなキザったらしい仕草をする妹は小突いておく。
それ、他人の前でやったら黒歴史だからね。異世界に来ても厨二病が治ってない。
前世と変わってない葵に安心するやら呆れるやらでため息をつきつつ、気になった点を尋ねる事にした。
「悪役令嬢ってことは、ゲームではクロッカス殿下の娘としてちゃんと育てられてたって事?」
なんせ『女王陛下のアイリス』に対抗する悪役令嬢なので、それなりの地位にいないとおかしい。
私みたいに10年前の反乱の後、孤児院に預けられたりしなかったんだろうか。
しかし妹は首を横に振った。
「ううん。スノウが記憶を無くして、孤児院に預けられるのは同じだよ。問題はその後」
「その後......? 何かあったの?」
葵は真剣な表情に戻って語り始めた。
「物語の中で、アイリスがお城から逃げ出すでしょ。その時に城下町で、偶々アイリスとぶつかった女の子がいたの」
あれ? この話、なんだか身に覚えがあるな......?
「その女の子はぶつかったアイリスを避けきれずに倒れちゃうんだけどね、アイリスと攻略対象は急いで逃げないと行けないから、その子に謝りながら立ち去るんだけど......。その時に、倒れて頭を打った女の子は思い出しちゃったの。自分が『スノウ』で、母親が自分を殺そうとしていた事を」
「そこで思い出す流れだったの!?」
早い、早過ぎる。
しかも精神は5歳のまま、全く知らない場所で記憶が戻ったスノウは混乱必須だったろう。
可哀想すぎる。
とりあえず心の中のスノウを撫で回す事で心の均衡を保ちつつ、妹の話の続きに耳を傾ける。
「私もアイリスを逃して国を内乱状態にしたくないし、スノウの事もどうにかしたかったから、あのイベントが起こる近くにいたんだけど......お姉ちゃんがアイリスにぶつかる方が早かったんだ。スノウの記憶が戻ったらまずい! って思ったのに......」
葵はジト目で私を見つめた。
「ぶつかったアイリスの方が転んでたよね。どういう事??」
「鍛えてたからね」
お姫様とは体幹が違うんだよ。
ぶつかって来た小柄で華奢な女の子に押し負けるような柔な鍛え方はしていない。
なるほど、悪役令嬢を回避出来たのは鍛えてたからか。ありがとう、院長。
そういえば、その後にアイリスの魔法が私の頭に向かって飛んできた。あれもゲームの流れを修正しようと、何かの力が働いていたのかもしれない。
普通に避けたけど。
やはり修行......! 修行は裏切らない......!
これが本来のタイトルでした