予想外の真実
そういうわけで、ジェードからお城の一角にある秘密の部屋を教えてもらえた。『影』が話し合いに使う部屋なので、院長に許可を取れば他の『影』もこない上に気密性も抜群らしい。
やはり持つべきものは優秀な弟である。
翌日、さっそく私は彼と共にその部屋を訪れた。
「こんなところに呼び出して、どうしたの? サクラちゃん」
不思議そうに尋ねてきたのは、連れてきたモブ君だ。
そう―――彼が『ゲーム』という言葉が通じた唯一の人物である。
私は部屋の奥にモブ君を案内して、自分は扉の前に陣取る。
退路は絶った。
私は真剣な顔でモブ君を睨みつけた。
「モブ君……。貴方、転生者でしょ」
「え?」
モブ君は目元が髪で隠れてるから、表情が読みにくい。驚いているのか、焦っているのか、今一わからない。
「前に子どもの行方不明事件の時、私が『これがゲームだったら、私達が見てる間に都合の良く犯人の動きがあったりするんだけど』って言ったでしょ。モブ君、それで『現実はそう上手くいかない』って答えてたよね?」
「そう……だったっけ? あの時、色々遭ったから一々何を話してたかなんて覚えてないよ」
モブ君は戸惑ったように頬を掻いている。
確かに。その後に私が無理矢理犯人のアジトに侵入したり、魔法陣で牢獄に飛ばされたりしたからね。普段の何気ない会話なんて覚えてないのも不自然ではない。
だがここで弱気になったら『記憶違い』で押し切られてしまう。あくまで強気でいなければ。
「モブ君は確かに言ってたよ。でも『ゲーム』なんて言葉、クロッカス殿下もアンバーもグレイ隊長も知らなかったの。だから……モブ君も私と同じ、転生者なんでしょ?」
私が真っ直ぐモブ君を見つめると、彼は黙り込んだ。
誤魔化そうとしているのか、どう話すかを迷っているのか、髪に隠れて表情をうかがい知ることは出来ない。
でもモブ君が転生者なら『真実の水鏡』の件や、『ロータスに情報を教えて皇子に接触させようとした』事に関わっているかもしれない。
DLC編に向けて、またおかしな行動を起こされたら困る。
だから私はきつめの目つきを生かした悪い顔を作って笑う。
「もし話さないんだったら、無理矢理話してもらうことになるけど」
ついでにわざとらしく、指をバキボキ鳴らす。
モブ君なら、私がグレイ隊長と特訓してるのも知っているだろう。
やはり暴力。暴力は全てを解決する。
ジリジリにじり寄ってくる私に、モブ君は慌てたように口を開いた。
「ちょ……。乙女ゲームなんだから、そういうの止めようよ。すぐに力に頼るのはよくないって! お姉ちゃん!」