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無事解決?

「サクラ! 大丈夫!?」

「全然大丈夫! ありがとう、ジェード!」


 駆けよって来たジェードに戦闘の高揚感のままハグをする。

 あ、やっば。大蜘蛛の体液付いてて私の服が汚い。


「ご、ごめん! 汚かったよね!」


 慌てて離れようと手を離すと、反対にジェードが私の手を掴んだ。


「汚くなんかないよ。サクラが倒せなかったら、二人とも死んでたんだからさ。ありがとう」

「ジェード……」


 なんていい子なんだ。私が抱き着かれる側だったら遠慮なく投げ飛ばしてた所なのに。

 感動のまま見つめ合っていたら、耳にカサカサと虫が蠢く音が聞こえた。

 ボスを倒したから、雑魚敵の蜘蛛たちが退場していく音だろう。そう思って目を向けた。

 退場するどころか私たちを取り囲もうとする蜘蛛の群れ。数は数十いるだろうか。


 なんでゲームと違うんですか?


 死亡フラグを折ったと思ったらまだ続いていたらしい。


「サクラ……」

「待って、攻撃しないで」


 ジェードと背中合わせになって辺りを見渡す。先ほどの通路と違ってみっちりすし詰め状態の蜘蛛たちに、広い空間のせいで壁も遠い。避けて逃げるのは不可能だ。だからといって戦うのは自殺行為だ。数が多すぎる。


 めちゃくちゃ危ないけど、もう蜘蛛を踏みつけながら逃げるしかないのでは?


 軽く絶望しかけるが、目の前にはジリジリと距離を詰める蜘蛛たちしかいない。

 覚悟を決めて、ジェードを再度抱えようとした時―――


「やめなさい」


 聞き覚えのある声が響いた。その声に応答するように、蜘蛛たちの動きが止まる。

 コツコツと、革靴を響かせながら暗い通路から現れたのはアンバーだった。

 彼が左手を振ると蜘蛛たちは一斉に壁に向かって動き出し、あっという間に見えなくなった。


「こんな所にいたんですか。探しましたよ」


 眼鏡を直しながら近づいてくるアンバーに、ジェードが食ってかかる。


「アンバー! 今のどういうこと!? なんで君の命令にあの蜘蛛たちが従うの!? そもそもあの蜘蛛たちって一体……」

「質問は一つずつしなさい。この蜘蛛たちは『影』で飼っている子たちですよ。ちゃんと命令を聞ける頭のいい蜘蛛です。ジェードは新参者の上に城以外行ったことがないから知らなかったかもしれませんが」


 『王の影』ってこんなの飼ってるのか。趣味悪いな。ひょっとして主人公サイドがたびたび魔物に襲われてたのも、女王陛下を捕まえるための『王の影』からの妨害だったのかな。

 私の考察を無視してアンバーは淡々と話進める。


「隠し通路が地下にあることはこちらでも予想が付いていました。それがどこからどこまで続いているのか不明だったので、蜘蛛たちに探らせていたんです。それともう一度逃げられても困りますからね、侵入者は捕まえるように蜘蛛たちには指示が入っていました」

「捕まえる……? 軽く死にかけましたけど??」


 そこは抗議させてもらおうと口を挟むと


「蜘蛛たちに噛まれても毒で麻痺して動けなくなるだけですよ。糸で捕縛されても同じように噛まれて動けなくなるだけで死にはしません。大蜘蛛の方も意識くらい持っていかれるかもしれませんが、殺すようには命令してはいないのでそのまま放置されるだけです。もっとも……」


 アンバーはジェードを見やると笑顔になった。人を見下したような笑顔だ。


「どれだけ放置されるかはあの方次第ですけど。良かったですね、ジェード。サクラさんが助けてくれて」

「……っ」


 ジェードの顔が青くなる。

 つまり死ぬまで放置される可能性があったって事? そもそも隠し通路まで蜘蛛たちがいたってことは、すでに通路は発見されてたって事じゃないのかな。

 もしもジェードが通路を見つけても蜘蛛たちに捕まる。見つけられなかったら殺される。

 抹殺する気満々じゃないか。たかが1度のしくじりで、しかもジェードは関係ないのに。


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