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武装解除

 隊長室は前に一度だけ来たことがあるけど、相変わらず物が少ない。

 グレイは部屋の中に入ると、自分の剣を私に渡した。

 武装解除か。私を怯えさせないためだろう。

 スノウは相変わらず私に隠れたまま出てこないけども。負担をかけてごめんよ。

 グレイはどっかりとソファに腰をかけて長い息を吐いた。


「嬢ちゃんもわかってるんだな。俺が何をしたか」


 長い沈黙の後、グレイは絞り出すような小さな声で言った。


「はい。グレイ隊長がリリーさんを殺したんですね」


 モグラを抱える手に思わず力が籠る。

 私が力強く見つめていると、グレイは項垂れたように頷いた。


「そうだ。お嬢を守るためとはいえ、姐さんを殺したのは俺だ」

「でもあの場ではそれしかスノウを守れなかったんです。あれしかリリーさんを止める方法はなかったと思います。グレイ隊長がいなかったら……私もスノウはここにはいませんでした。だから、私は助けてくれたことを感謝しています」


 後からなら意見なんていくらでも言えるけど、あの場にはグレイしかいなかった。

 とっさの判断でスノウを助けることを選んでくれたのだ。

 誰に責められても、私はそのことに感謝している。

 それでもグレイの顔は暗いままだ。

 私はグレイを見つめたまま、言葉を続ける。


「でもそれは私が助けられたからであって、その判断が正しかったのか、間違っているかは私にもわかりません。本来なら法が決める事です。でも……殿下と院長に黙っていたのはどうしてですか?」


 殺したこともそうだが、その事実を黙っていたのも問題である。

 いくらあの二人を傷つけたくなかったとしても、院長は殿下を恨んで殺したいけど殺したくない矛盾でメンタル弱々になっていたし、殿下は自分がリリーさんを殺したかもしれないと思って気に病んでいただろう。

 それをグレイは間近で見ていたはずだ。

 グレイはようやく少し顔を上げて、私の顔を見た。相変わらず暗い顔だ。


「あの二人には……言えなかった。別に俺が責められるだけならいい。怒り任せに殺してくれるなら、それでも良かった。でも殿下は……兄上はそんなことはしない。絶対に理由を聞いてくる」


 そういえば、グレイはクロッカス殿下の異母弟だってリリーさんが言ってたっけ。


 親戚のオジサンみたいだと思っていたけど、本当に親戚の叔父さんだったんだな……。


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