表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

260/372

親子の再会

 モグラを抱えたまま『影』の本部からお城に戻る。

 スノウだと初めて見る物に目移りして危なっかしいので、殿下に会うまでは私が前に出ている。

 スノウがもう少し大きくなったら、別の人格が自分の中にあるのも問題になるのかもしれない。今はスノウが幼いから『イマジナリーフレンド』くらいで済んでいるんだろう。

 そこらへんも院長たちに相談するとして、今はクロッカス殿下だ。

 院長は眼鏡姿のアンバーになっているので、警備は当たり前のように素通りである。

 スノウもアンバーの姿を見慣れているのか、何も言わない。

 アンバーが執務室の前で扉を叩き、中からの返事も待たずに扉を開ける。

 部屋の中ではきょとんとした顔のクロッカス殿下とグレイがいた。


「どうした? なにかあ―――」

「お父様!」


 クロッカス殿下の質問を待たずに、モグラを放り出したスノウが飛び出す。

 後は若いのに任せた、とばかりに私は後方腕組み彼氏面で見守るだけである。

 スノウは走り出した勢いのまま、座っているクロッカス殿下の首にしがみつく。殿下は大きく目を開いた。


「―――スノウ」


 呆けたように呟いた殿下が、ややあってスノウの背に手を伸ばす。


「逢いたかった……ずっと逢いたかった、スノウ。()()は……お前を守れなかった……。リリーの事も……。すまない」

「お父様は怖いのから私をちゃんと守ってくれたわ。ありがとう、お父様」


 泣きながら抱きしめ合う親子にこちらもじーんときていたら、不意にクロッカス殿下が瞳を覗き込んできた。


「サクラのおかげだな。ありがとう」


 院長の時と同じく、ちゃんと目が合っているように感じる。

 院長はともかく、この人はなんでわかるんだ? 勘?


「うん! お姉さまが助けてくれたの!」

「そうか、流石サクラだ。二人とも大事なオレの娘だよ」


 再び殿下がぎゅっと抱きしめてくる。

 スノウはとびっきりの笑顔だが、私はちょっと困惑気味だ。

 それに待ったをかけたのは、先ほどまで私と同じく後方腕組み彼氏面で見守っていたアンバーである。


「待ってください。サクラはボクの娘ですけど!? スノウが帰って来たんだから、サクラはボクに返して下さい!」


 眼鏡を外して、なりふり構わずいつもの院長としてドスドス足音を立てて殿下とスノウに近づいてくる。


 感動の親子の対面に水を差すな。というか、なんだ。その謎理論は。


 私のツッコミは届かず、代わりに院長には親子からの冷たい目線が向けられた。


「何を言ってるんだ。サクラは元々娘だと思っていたし、スノウの姉ならオレの娘だろ」

「そーよ! 私のお姉さまなのよ!」


 殿下はともかく、スノウにまで言われてショックを受けたのか、院長はそのまま床に崩れ落ちた。


「スノウにまで言われた……。味方がいない……。ううう……」


 地面に倒れ伏したまま呻いている。

 ガチ泣きしているんじゃなかろうか。


 見た目が若くても、30代の叔父さんがそんなことをするのは見苦しいぞ。スノウの教育に悪い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ