表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

239/372

隠された物

「僕は聞いたらダメなんですか」

「ダメ。これは『雪の妖精』の血縁にしか教えない事なんだ」


 私の手をぎゅっと握ったまま、不安そうに尋ねるジェードに、院長は迷わず言い切る。

 院長がそう言うのなら、いくら駄々をこねても無駄だろう。

 私はジェードを安心させるように、ジェードの手を再度握った。


「大丈夫。そんなに心配しなくても、話を聞くだけだから。それに私も、院長の話を聞く必要があるって思ってるの」


 DLC攻略の為にも院長の話は聞いておくべきだ。

 ひょっとしたらDLCと関係ない話かもしれないけど、話を知らない私には判断が付かない。情報は集めておかないと。

 決意を胸にジェードを見つめていると、ジェードは不安そうに瞳を揺らしながらも頷いた。


「わかった。でもサクラが受け止めきれない話だったら、僕に遠慮なく話して。僕はサクラが大事だから、言いつけを破っても話を聞くよ」

「ジェード……」


 なんて優しいんだ。思わず胸にジーンときてしまう。

 感動していたら、水を差すように院長の不貞腐れた声が割って入ってきた。


「サクラは真面目だし強いから、ジェードを頼ったりしないよ。そもそもボクがいるし。いいからさっさと戻りなよ」


 まるで虫でも払うかのように片手でジェードを追い払う仕草をする院長に、ジェードは少しムッとした顔になる。しかし上役だからか、まだ院長が怖いのか言い返しはしない。

 ジェードは名残惜しそうに私の手を離すと、席を立った。


「じゃあサクラ、後でね」

「うん」


 ジェードは何度も私の方を振り返りつつ、部屋を後にした。仕事が終り次第、私の話を聞きに来てくれる気なのだろう。

 良い弟を持って、私は幸せ者だ。

 ジェードが退室するまで見送ってから視線を院長に戻すと、院長は相変わらず不貞腐れた顔をしていた。


「院長、後でジェードを虐めたらダメですからね」

「……わかってるよ」


 釘を刺すと、溜息をつきながら明後日の方向を向かれた。

 やっぱり院長って上に立つの向いてないんじゃないかな。感情的過ぎる。

 そんなことを思っていたら、院長が流し目でこちらを見やり、私を手招いた。


「サクラ、こっちにきて」


 急に何だろうと疑問に思いつつも、言われた通り一段高くなっている院長の椅子の近くまで移動する。

 モグラも私の後をついて一緒に歩いてくる。多分、話が気になるのだろう。

 院長はモグラを気にした様子もなく、立ち上がって自分が座っていた椅子の後ろに回る。

 そこにあるのは真っ白な壁だけだが、院長が壁に触れた途端にその白が一部分だけ消えていく。

 そして院長の触れた部分からドンドンと色が変わり長方形の扉―――の残骸が姿を現した。

 扉はまるで無理やり吹き飛ばされたようなボロボロ具合だ。ほとんど原型を保っていない。


「ここ、本当は『雪の妖精』の特徴と同じ者しか開けられないようになってたんだ。今はボクが塞いでるけど、正直に言って昔の方が強固な術式で守られてたよ。……悔しいな」


 院長が私の方を振り向いて、歯痒そうに呟く。

 確かによく見ると、扉のあった部分に透明な膜のように覆いがしてあるのが見えた。これが院長の術なのだろう。

 一緒に近づいてきたモグラがその透明な膜に触れて、難しそうな声を上げる。


「これも相当な実力者でないと破れないだろうに、これ以上の物が仕掛けられていたのか。それほどまでに重要な物がこの奥にあると?」

「そうだよ。お前には見せないけどね」


 ツーンとそっぽを向く院長に、モグラがまた食って掛かりそうになる。それを抱き上げて口を塞ぎながら、私が続けて質問する。


「それが無理矢理破られたってことですね」

「そうだよ。10年前の反乱の日―――姉さんが殺されて、君が記憶を失った日に壊されたんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ