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幼馴染システム

「後継ぎ的な意味で子どもは作らないといけないってことですか?」


 院長がものすごく嫌そうだけどそんなことを言うなんて、余程の事情だろう。『影』を継続させるのは他の人間でもいいみたいだし、それ以外の―――院長が後で教えてくれるという、DLCがらみの事か。

 院長は私の質問に曖昧に頷いた。


「それもそうなんだけど、子どもなんてボクが適当に作ってもいいから、そっちは気にしなくていいよ」

「さらっと最低な事を言わないで下さい」


 子どもはコウノトリが運んでくるわけじゃないんだぞ。

 あんまりな発言に再度拳を握りかけたが、院長は面倒そうに嘆息した。


「これでもボクはモテるんだよ。『影』ではトップだし、生まれた子どもも将来的に(おさ)になれるなら、愛情がなくてもいいって相手なんていくらでもいるよ」


 それはモテてるっていうのか? 権力にすり寄ってきてるだけな気がするけど。

 でも私は見慣れてるだけで、院長はとんでもない美形だ。一晩だけでもいいって人はいるのかもしれない。

 院長は私から目を逸らして遠くを見る。


「ボクだってサクラに恋人なんて作ってほしくないよ? でも好きな人がいるって幸せな事だから……サクラからその機会を奪うのは良くないでしょ」


 院長はどこか切なそうに、独り言のように呟く。

 リリーさんとクロッカス殿下を見て、そう思ったのかもしれない。院長の事だから、リリーさんの結婚や恋愛に関して色々反対したんだろう。それでも折れたのはきっと、リリーさんの幸せを取ったからだ。

 リリーさんが幸せだったから、院長が嫌でも私にそういう機会があった方がいいって考えなんだろうな。

 そこで私はピンときた。


「私を孤児院に入れたのも、同い年くらいで優秀な影候補がいるからお相手探し的な意味もあったんですか?」


 幼馴染同士が恋に発展するなんてよくある話だ。

 それに孤児院にいるなら相手の経歴を心配する事もないし、恩もあるから『雪の妖精』の秘密が漏れなくて良いってことでもある。

 院長は少し嫌そうな顔で頷いた。


「……まぁね。本当はここで大事に仕舞って育てようと思ってたんだけど、殿下が『同じ年くらいの子どもの交流は大事』って言ってたし、『閉じ込めたら嫌われるぞ』って言うから」

「そうですね。そんな事をしたら嫌いになってましたよ」


 院長は私の『嫌い』って言葉にショックを受けた顔をする。

 でも実際にこの地下で外にもいかず、院長以外と誰とも会わずに育てられたら、院長を嫌う以前に発狂してたかもしれない。クロッカス殿下に感謝だ。

 呆れつつも私は一先ず自分の現状を伝えることにする。


「今のところ、誰かを好きになったりしたことはないので安心してください」


 私の言葉に、院長はぱっと明るい笑顔を見せた。代わりに真横にいるジェードがちょっと傷ついた顔をしている気がするけど、多分気のせいだろう。


「そう、それならいいんだ。でもね、サクラ。貴族とか、教会の人間とか、帝国の人間なんかは選んだらダメだよ。そんな奴連れてきたらボクは全力で邪魔するし、反対するからね」


 院長の邪魔とか反対ってヤバそうだな。リリーさんの時は、実力が拮抗してるクロッカス殿下だったから耐えられただけな気がする。


「面倒くさい奴だな……」


 モグラが思わずぼやく。

 人間じゃないモグラに言われるなんてよっぽどだよ。


『影』の人間でも邪魔をしないとは言っていない。

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