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影の内情

 ジェードも私と同じ疑問を覚えたようだ。

 恐る恐るといった様子で手をあげて質問する。


「何かとはなんでしょうか。良くないことが起きる想定があるようですが」

「ジェードが『影』で上に立てるようになったら教えてあげる。ああ、サクラは後で教えてあげるから安心してね」


 院長ににっこり笑顔を向けられたが、何も安心できない。多分、DLC関連の問題だろう。嫌な予感しかしない。

 思わずしかめ面になった私と違って、ジェードは別の事が気になったようだ。


「そんな秘密をサクラに教えるなんて……サクラに『王の影』を継がせるつもりですか?」


 ジェードの表情も声根が固い。ジェードとしては私に同じ仕事をさせたくないのだろう。

 なんて優しいんだ。姉として胸を打たれてしまう。

 私の感動を余所に、院長は静かに首を横に振る。


「違うよ。サクラにも……スノウにも継がせる気はない。確かに『雪の妖精』の血縁は、代々『王の影』の(おさ)だったけど、ただの飾りとして(おさ)を務めていたことも結構あった。今はボクがいるし、サクラがやりたくないならやらなくていいよ。ボクに何かあったら、サクラは名前だけで実務はジェードか他の実力者にやってもらえばいい」


 『王の影』も会社みたいなものだから、下手に『雪の妖精』の血族だけがトップを務めると立ちいかなくなることもあるだろう。だから形式的な物だけで実力がある人がトップだったこともあるんだろうな。

 そこまでして『雪の妖精』が上に立ってないといけないのが謎なんだけどね。

 しかしそれで院長が私を鍛えた理由がわかった気がした。


「それで私に鍵開けとか諸々の技術を教えたんですね。一応『王の影』の後継ぎだから」

「いや。サクラが何でも頑張って覚えてくれるから、嬉しくてつい」

「つい、で教える物じゃないですよ」


 違ったんかい。

 思わず呆れてしまった。

 私との特訓を思い出してか、懐かしそうに頷いている院長に質問を重ねる。


「でも私のせいでジェードに嫌な仕事をやらせることになるじゃないですか」


 私の言葉に院長はすっと真顔に戻ってジェードに視線を向ける。


「ジェード。この仕事を自分でやるのと大事な人にやらせるの、どっちがいい?」

「僕がやります」


 即答だった。

 私より年下なのに、きつ然とした表情を見て少しドキッとしてしまう。知らない間に弟が成長している。

 一方で院長は答えを予想していたのか、背もたれに背を預けながら足を組みなおした。


「だろうね。ジェードはボクにそっくりだ。お前を選んだのもそういうところだよ。……好きになるタイプまで同じなんだから」


 最後に小声で呟いた言葉は聞き取れなかったが、それを聞きなおす前に院長が話題を変えた。


「サクラの親が特別なだけで、元々『雪の妖精』の血縁は『影』の人間と結ばれることが多かった。その方が秘密も守れるし、人柄もわかってるからね。だからボクはね、嫌だけど、想像するだけで嫌なんだけど―――サクラが選ぶなら『影』の人間がいい」


 院長は本当にものすごく嫌そうな顔で苦々し気に言い切った。


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