簡単でしょ?
しばらく走り続けていると、狭い下り坂が終わって開けた通路に出た。近くで水の音がする。
何とも言えない異臭からして下水路かな?
城の地下まで来たのかもしれない。
「狭い通路で挟み撃ちにならなくて良か……」
良かった、と言いかけた。言いたかった。
しかし言う前に気づいた。壁が動いた気がする。
いや、気がするんじゃなくて動いた。
視力強化でようやく見える程度だが、壁にも天井にも地面にも先ほどと同じ蜘蛛が張り付いている。サイズは様々だが私の膝まで大きい奴もでいる。
その数十匹以上いるんじゃなかろうか。
殺意高すぎ!!
心の中で絶叫していたら横にいたジェードが先に動いた。
「ウィンドカッター!」
ジェードの魔法が一匹に命中する。が、それほど効いている様子はない。
初期レベルだからね! 仕方ないよ!!
しかしそれが刺激になったのか、蜘蛛たちがじりじりと間合いを詰めてくる。戻るにしてもさっきの蜘蛛がいるかもしれない。
そして出るには進むしかない。
ならやることは一つ。
「ジェード、ごめん!」
「え!?」
謝りながらジェードを小脇に抱える。ジェードが私より小柄で助かった。
相手は虫で統率が取れているわけじゃない。
『身体強化』で目一杯加速して跳躍する。目指すは蜘蛛たちがいない僅かな隙間。
壁! 天井! 壁! 地面! もう一回壁!
一瞬でも遅れると蜘蛛が足に向かって飛び掛かってくる。
そういえばここで『ジャンプの練習をしよう!』ってチュートリアルあったな。操作覚えるためにそこだけ妹から借りた覚えがある。
こんなに難易度高くなかったけどね!!
なんとか蜘蛛の軍団から抜けて再度走り出す。
蜘蛛たちは足は速くなさそうだし、距離を取れば大丈夫だろう。
「ちょ、ちょっとサクラ……!」
「あ、ごめん」
そこでようやく小脇に抱えていたジェードを離す。なんだか顔色が悪い。
「大丈夫? 酔った? 私も院長に抱えられた時に酔ったからわかるよ」
院長の場合、私以上の超加速だったけど。気分は360度回転ジェットコースターだった。
『何かから逃げる時はこうすればいいんだよ。ね? 簡単でしょ?』
そう言われて教わったのが懐かしい。おかげで生き延びられた。ありがとう、院長。
しかしジェードの顔色が悪いのはそれが原因ではないようだった。
「サクラ……。おかしいよ、『身体強化』だけでこんなこと出来ないよ……!」




