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呼び出し

 モブ君とのんびりおやつを食べていたら、誰かがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。


「サクラ!」


 息を切らしてやってきたのはジェードだ。

 ジェードは私の隣にいるモブ君を睨んだ後、私の手を取る。


 そんなに必死に腕を捕まなくても、逃げ出したりしないよ。野生動物じゃないんだから。


 突然現れたジェードにモブ君は驚いたように口元を手で覆ったけど、すぐに微笑ましそうな顔でジェードと私を見た。モブ君が大人で良かった。

 ジェードは悔しそうな顔を浮かべた後にモブ君から私に視線を移した。まだ私の腕を掴んだままだ。


「サクラ、ちょっと来てほしいんだ。その……院長が呼んでる」

「そうなの?」

 

 院長が何の用だろう。

 それにわざわざジェードを使って呼びに来るなんて珍しい。昔はともかく、今はアンバーとしても会っているから、用があるなら直接言いに来ると思うんだけど。

 疑問は覚えるけど、ジェードも困った顔をしているし、今日はグレイ隊長との特訓はキャンセルにしてもらおうかな。

 院長の用事がどれくらいかかるかわからない分、待たせたら失礼だ。


「わかった。グレイ隊長に断ってから行くから、ちょっと待っててくれる?」


 別の仕事があってグレイ隊長がまだ来ていないからジェードにそう伝えると、横からモブ君がすかさず口を挟んできた。


「隊長には俺が伝えておくよ。急ぎの用かもしれないんでしょ?」

「いいの? ありがとう、モブ君」


 モブ君の優しさが沁みる。

 ひょっとしたら院長からグレイ隊長に直接言ってくれているかもしれないけど、すれ違ったらグレイ隊長に失礼だからね。


「じゃあ行こうか、ジェード」

「うん」


 頷きながらもジェードはほっとした顔をしている。

 まだ院長が怖いんだろうな。仕方がない。

 そんな事を考えながらジェードに着いていくと、彼はどんどんと城の中を進んでいく。

 行き先に不安を覚え始めた頃、ようやくジェードは立ち止まった。

 そこは以前、ジェードと話し合いをしたことのある目立たない小さな部屋だ。

 懐かしい。あの時はジェードを死なせないように必死だった。

 感慨深くなりながらジェードと一緒に部屋の中に入ると、そこは依然と全く変わらない様子だった。院長も見当たらない。


「あれ、院長は?」


 てっきり部屋の中で待っているのかと思っていたが違ったらしい。

 ジェードは緊張したような顔で改めて私の顔を見つめる。


「あの方は……『影』の本部で待ってるよ。サクラも今からそこに連れて行くから」


 それって私が行っていい場所なのか?


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