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真ボス

 そもそも院長がDLCの真ボスだなんて、私の憶測でしかない。そもそもDLCで出てくるのかすらもわからないんだから、悩むのは止めよう。

 今は目の前の事態に集中しなければ。

 地震の件が片付かないと、DLCどころではない。

 クロッカス殿下は奥にあるサルファー帝国の紋様が刻まれた古い石板を暫く見つめたあと、石板に手を置いた。


「術式に干渉は出来ると思うが……。アンバー、他は任せていいか?」

「お任せを」


 院長は自身の胸に手を置いて答えた後に、クロッカス殿下に背を向けた。

 背中合わせに立つ二人に疑問を持ちつつも、こういうところを見ると、院長って『アンバー』なんだなって実感する。

 クロッカス殿下は石板に向けて己の魔力を流し始める。それからややあって、サルファー帝国の文様が淡く光り始めた。それと同時に、石板の周りの壁に複雑な幾何学模様が浮かび上がり、光り始めた。石板を中心に、幾何学模様の光は壁伝いにドンドンと広がっていく。


「隠されていた封印の術式をここまで暴けるのか。良い腕だ」


 モグラが感心したように呟く。

 水晶と壁の光で洞窟内がより一層神秘的に感じられる。やがて幾何学模様の光が大妖精の間を覆うように展開したところで、異変が起きた。

 天井や壁から生えていた巨大な水晶が、一斉に動いたのだ。

 奥の石板にいる二人に向けて。

 自然落下ではない。まるでミサイルのように複数飛んでくる水晶を、院長は蚊でも振り払うような動作で吹き飛ばした。吹き飛ばされた水晶は、違う場所から飛んできていた水晶にぶつかって粉々に割れる。

 複数同時に飛んでくる水晶を、院長はまるで音楽の演奏を指揮するような優雅さで淡々と処理していく。それも飛び散る破片が入り口にいる私たちや、奥にいる殿下に当たらないように計算して水晶を処理しているのだ。

 そうでなければ、私たちも殿下も水晶の破片で大けがをしているところだろう。

 そんな中でもクロッカス殿下は全く動揺した素振りを見せていない。石板に集中したまま、振り返りもしない。凄い集中力だ。

 院長に『頼めるか?』って聞いてたのはこの事だったんだろう。


「でも、なんで急に水晶が?」


 私の疑問にモグラが答えてくれた。


「術式に干渉されたから、防衛機能が働いたのだろう。封印を解除するなら、術式も全て機能しなくなるから、そちらの方が簡単だったのだがな」


 ブレーカーを落としたら防衛機能もダウンするけど、ブレーカーを入れたまま干渉したから防衛機能が働いてしまったって事か。

 院長が封印に干渉しないで解除しようとするわけだ。あの場で術式に干渉したら、流石に私たちを守り切れないと思ったんだろう。

 この怒涛の水晶の雨を、私やロータス達だけでさばききれるわけがない。

 それにしたって飛んでくる水晶の勢いが収まらない。最初の勢いのまま、バカスカとミサイルのように飛んでいく。


「洞窟内にこんなに水晶って生えてたっけ?」


 モグラに対して疑問を口にしたところで、その疑問の答えが降ってきた。

 私たちと院長の間に、ドラゴンが降ってきたのである。

 それもただのドラゴンではない。背中に無数の水晶を生やした突然変異種だ。モンスターをハントするゲームで出てきそうな姿である。

 院長はものすごく面倒そうな顔をして、こちらに顔を向けた。


「グレイ。ちょっと手伝って」

「わかった。お前にばかりいい格好させられねーからな」


 そう言いながら、グレイ隊長は嬉々とした顔で抜刀した。


 この陣営、戦闘狂が多いな。


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