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DLC

 妹の言葉が正しいなら、『恋革』のDLCが出ていた可能性がある。

 しかし私は何も覚えていない。なぜなら妹と共に『恋革』のゲームをクリアした後すぐ、私はブラック企業に就職したのだ。ゲームに触れるどころではなかった。自宅と会社の往復しかしていない。

 DLCが予定通り出ていたとしても、妹も空気を読んで私にゲームを手伝う事を頼まなかっただろう。

 ということは、ゲームの内容もわからず、1から調べなければいけない。

 それどころかまたゲームに巻き込まれる危険がある。

 でもその内容次第では、クロッカス殿下を救済できる可能性がある。

 思い悩んでいると、院長が心配そうに話しかけてきた。


「サクラ? 大丈夫? 神の呪いとか、色々不安にさせちゃったかな。でも大丈夫だよ。何があってもボクに任せておいて。絶対にサクラの事を守って見せるから!」


 華をまくような笑顔で宣言されて、思わず笑顔になってしまう。


「はい。ありがとうございます。院長」

「アンバーって呼んでよ~」


 私の頭を撫でる院長を見てほっとする。

 確かに何でもできる院長が味方なら、何が起きても大丈夫―――


 待てよ。


 妹は『アンバーは絶対にDLCで出てくる』って予想してた。あくまで妹の予想ではあるが、もし出てくるとしたなら……。

 『雪の妖精』と同じ姿―――つまり、今の院長の姿で出てくるんじゃないか?

 ゲーム本編で院長に見覚えがなかったのは、私の知らないDLCで出てきた姿だからじゃないだろうか。

 『恋革』では名前しか出てこなかった顔の良い『雪の妖精』の姿が出てきたら、DLCを買う意欲も増すだろう。

 そしてゲーム本編のアンバーの立ち位置からして、主人公の味方として出てこない。

 そう、それこそゲーム本編のラスボスより強い―――DLCの真ボスとして出されたんじゃないだろうか。

 そうすると院長の強さにも納得だ。本編クリア前提の強さなんだから。


 つまりDLCが始まると、院長が敵になる可能性がある……?


 無理無理無理。絶対に勝てない。将来的には院長より強くなりたいけど、今すぐは無理だ。

 でもクロッカス殿下の呪いを解くにはDLCの情報が必要だ。

 つまり院長を敵対させずに、クロッカス殿下をうっかり死なせることなく、1から呪いを解く方法を探さなくてはいけない。


 無理ゲーでは?


 呆然とする私の腕を、抱えていたモグラがペチペチと叩いた。


「おい、着いたぞ。何をぼーっとしておるのだ」


 はっと気が付くと、巨大な水晶が四方から生えた大妖精の間に到着していた。

 ちゃんと案内出来ていて良かった。乙女ゲームに興味なさすぎて、効率廚と化していたのが功を奏した。

 クロッカス殿下は初めて見る神秘的な光景に目を輝かせていたが、すぐに真面目な顔に切り替える。


「封印はこの奥か」

「はい」


 私が頷くと、殿下は院長を引きつれて奥に向かっていく。

 一方、グレイ隊長は私の傍に控えて声をかけてきてくれた。


「嬢ちゃん、疲れてるだろ。座って休んでろよ。俺がいるから安心しろ。と言っても、アンバーに比べたら頼りねーかもしれないけどな」


 ここまでくる間に色々考えていたせいで、周りの大人たちに心配させてしまっていたらしい。

 私は努めて明るい笑顔を見せた。


「大丈夫です。それにグレイ隊長はいつでも頼りになりますよ」

「はは、お世辞でも嬉しいな」

「お世辞じゃないですよ」


 私の言葉もグレイ隊長は笑って受け流す。

 殿下と院長が規格外なだけで、グレイ隊長だって強いのになぁ。身近で二人を見てるから、実力差とか顕著に見えてしまうのだろうか。

 それでも努力を続けて院長に勝とうとする気概を持ち続けるのは凄いことだ。


 私も挑戦する前から挫けている場合ではない。頑張らなくては。

 自分の為にも。


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