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いつも隣に死亡フラグ

 私の問いかけに院長は遠い目をする。


「昔は良かったんだよ。殿下のところにいても姉さんとお茶したり、スノウの面倒みたり、グレイと遊んでるだけだったから」

「遊んだ覚えねーよ」

「なのに殿下ってば急に偉くなってさ......。こっちはボクの息抜きの時間だったのに。ボクは何でも出来るから平気だけど、普通の人間だったら過労死してたね」


 グレイ隊長の発言は華麗にスルーして、院長は苦い顔をしている。

 普通だったら、その時点で兼業しようと思わないよ。

 特に10年前にシアン侯爵が起こした反乱の後なんて、『王の影』も忙しかったはずだ。そこにクロッカス殿下の執事として行政の立て直しに注力するのも加えたら、寝る暇なんてなかったんじゃないだろうか。


「いつ休んでるんですか?」


 前世でブラック企業勤めだったせいか、興味半分でうっかり尋ねてしまった。

 院長はにっこり笑顔で答える。


「孤児院でサクラの所に帰ってきてた日が、ボクの休日だよ」


 一か月に数回あれば良い方か。偶に三ヶ月くらい間が空く時があったけど、忙しかったんだろうな。

 そんな偶の休日を私の特訓で潰していたのか。大変申し訳ない。いくら院長が体力オバケとはいえ、仕事の疲労は別である。今になって懺悔で胃がキリキリしてきた。


「ちゃんと休んでください......」


 前世を思い出して、うっかり死にそうな声を出してしまった。

 その間にクロッカス殿下はいつもの椅子に座って足を組む。そして困ったような顔で院長を見た。


「私の方は気にするなと言ったんだかな。元々アンバーはリリーの為に私の側にいただけだ。リリーが亡くなった後はスノウ......サクラを守ってくれれば良いと思っていたんだがーーー」

「ボクがいなくなったら殿下が死んじゃうじゃないですか! 貴方って人は放っておくと食事も睡眠も疎かにするんですから! それに暗殺毒殺誅殺から貴方を守ったのはボクとグレイなんですからね! 感謝してください!」


 院長がキレて喚く。殿下はそれに穏やかな眼差しを返した。


「ああ、いつもありがとうな。アンバー、グレイ」

「......わかってるなら良いんですよ」


 真っ直ぐな感謝を受けて、院長は腕を組み直してそっぽを向く。仕方なく矛を収めたように見せて、嬉しさを隠しきれてない。


 ツンデレか?


「......ひょっとして院長って殿下の前だと素直になれなかったりします?」


 私がこっそりグレイ隊長に尋ねると、彼は大真面目に頷いた。


「万年反抗期みたいなもんだよ。姐さんの事も拗らせてるせいで、殿下の事が大事なくせにその日の気分で殿下を殺そうとしてくるから割と油断ならない。今は嬢ちゃんがいるおかげで、大人しくて助かるぜ」


 言外に普段はもっとヤバいと言われている。


 院長のメンタル不安定すぎないか? 死亡フラグが隣にいるような物じゃん。


 それを側に置いて、あんな穏やかに笑ってられるの殿下だけだよ。

 なんで殿下が院長から嫌われてると思っているのか謎だったけど、院長が色々拗らせすぎてたせいか。

 普段はあんなに仲良さそうなのに、気分で殺しにかからないでほしい。


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