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真相

 懐中時計を突き付けられたアンバーはぐっと堪えるような顔で目を瞑る。そしてゆっくり己の眼鏡に手をかけて外した。

 途端に髪は白に、服もいつも見ている白いローブに変わる。

 アンバー―――院長は再び目を開けて、渋い顔で私の肩を掴んだ。


「女の子なんだから男の服に手を突っ込んだりしちゃダメだよ!! 危ないから!! いろんな意味で!!」

「お前が言い訳しなきゃ、嬢ちゃんもそんな真似しなかっただろ」


 グレイ隊長の冷めたツッコミに、院長はギッと他二人を睨む。


「グレイと殿下のせいですよ! 二人ともヒントになるような事言うからバレちゃったじゃないですか!」

「騙しているお前が悪い」


 クロッカス殿下にまで冷たい目で言われ、院長はぐうの音も出せずに悔しそうな顔をする。

 一方、私はいまだに院長が逃げないように胸倉を掴んだまま、真顔で尋ねる。


「なんでこんな事したんですか?」


 院長はしどろもどろと言った様子で視線を左右に彷徨わせた後にとても小さな声で話し出した。


「『アンバー』って性格悪いでしょ? そんなの演じてるとわかったら、サクラに嫌われると思って……」

「演じてないだろ。口調は変えても素でやってんだろーが。嫌われちまえ。お前なんか」


 グレイ隊長が辛辣に言い放つ。途端に院長はわっと泣きそうな顔になった。


「酷いよ、グレイ! 友達でしょ!?」

「誰が友達だ! お前を友達だと思ったことねーよ!!」


 グレイ隊長の言葉にまたも泣きそうな顔でしょげる院長。

 考えてみれば、最初から院長はグレイ隊長に遠慮がなかった。18年間、同僚として苦楽を共にしたら気安いのも当然か。

 それはそれとして、私は静かに院長を見つめる。


「人のせいにしてないで、私に言う事があるんじゃないですか?」


 静かな怒りを込めた言葉に、院長ははっとしたように私に向き直る。

 そしてものすごく情けない顔で頭を下げた。


「騙しててごめん。『アンバー』の時に酷いことも言ったけど、あれはバレたくなくて言っただけで……決して『怒ってる顔も可愛い』とか思ってないから!!」

「思ってたんですね」

「ごめん! もうしないから!! 嫌いにならないで!! サクラに嫌われたらボクは生きていけない……」


 そう言うと院長はひしっとしがみつくように抱き着いてきた。

 完全に涙声になっている―――というか、ガチで泣いている。えぐえぐ言いながらしがみついてくる。


 そんな風に後悔するならしなければいいのに。この人、割とポンコツだな。


 私は深い深いため息をついて、院長の肩に手を置いた。


「院長には助けられてるし、次元を割いても助けに来てくれたし、もうしないなら許します」

「本当!?」


 ぱっと顔を輝かせて院長が顔を上げる。

 私はにっこり笑顔で頷いた。


「ただし、その面一発殴らせてください」


 言うが早いか、私は院長の顔面に拳を叩き込んだ。


 よし。少しスッキリした。


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