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尋問

「サクラさん、突然どうしました? 疲れて幻覚でも見てるんですか?」


 アンバーが困惑と心配が入り混じった顔で私を見る。


 これが院長だったら面の皮が厚すぎないか? ミリも動揺してないぞ。


 ちょっと不安になったが、クロッカス殿下とグレイ隊長がアンバーに同意せずにこちらを見守っているのを見て気を取り直す。

 私がおかしな事を言っていたら、この二人は指摘してくれるだろう。


「院長がいる時ってアンバーは必ず居ないですよね」

「あの方は気に入らない人間に姿を見られるのが好きではないのです。それに私も忙しいので」


 今度は『何を言ってるんだ、こいつは』って見下した顔をしてくる。めちゃくちゃ腹立つな。

 私だって院長とは信じたくないけど、周りの証言がどう考えてもお前が院長だと言っているようなものなんだ。

 それに、だ。


「前に院長が別の人間に化けられるって話をした時に、クロッカス殿下とグレイ隊長はずっと一緒だったからすぐにバレるって話てました。そこにアンバーがいないのはなんでですか?」


 最初の違和感はこれだった。

 殿下とグレイ隊長が一緒なら、アンバーだって一緒だろう。アンバーはグレイ隊長の前からクロッカス殿下に仕えてたんだから。


 アンバーが院長だから、自分を含めなかったんじゃないか?


「単純に私があの方の魔法を見破れないからですよ。それに、あの方は自分が認めた人物でないと歯牙にもかけません。単純に私が視界に入っていないのではないですか?」


 アンバーはため息を吐きながら諭すように私の言葉を否定する。


 全然動揺しない。質問の方向性を変えるか。


「アンバーが前に、一番大事なのは『昔は姉さんで今は姪っ子』って言ってたじゃないですか。あれはリリーさんと私の事じゃないんですか?」


 ちょっと寂しそうな声音で、俯きがちに言うのがポイントだ。

 他の人にやっても気持ち悪がられるだけだろうが、シスコンと親馬鹿を拗らせてそうな院長なら反応があるんじゃないだろうか。

 思った通りアンバーはぐっと息を詰まらせると、無意味にメガネを直す動作をする。


「......私に姉と姪がいるのは事実ですが、偶然の一致です」


 いつもの余裕の笑みを見せようとして、失敗した引き攣った表情に見える。


 これでも口を割らないか。強情な奴だな。


「わかりました。そこまでシラを切るなら私にも考えがあります」


 私は目を座らせて、更にアンバーに近づく。

 そしてほぼゼロ距離からアンバーの燕尾服の中に手を突っ込んだ。


「は!? な!?」


 さすがに予想外だったのか、アンバーが慌てて私を止めようとする、が。


「アンバー。いい加減にしろ」


 クロッカス殿下の怒気の孕んだ一言でアンバーはピタリと動きを止めた。


 院長もアンバーも、殿下に怒られるの嫌がってたもんな。同一人物なら納得だ。


 そうしてアンバーが動きを止めている間に、私は目当ての物を見つけた。

 これに感しては賭けだったが、院長なら持っていてくれると信じていた。


 私が贈った懐中時計である。


 私はアンバーの目の前に時計を突きつけた。


「院長に届けたって言ってましたよね? なんで貴方が持ってるんですか。嫌がらせにしても、院長にバレたら殺されます。そんな危険性が高い事をわざわざする意味はなんですか?」


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