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美味い話には裏がある

 私達が話している間にも会議は進んでいく。

 次に聞こえてきたのはアイリスの声だ。


『大陸に影響が出ないように、どうにか封印された場所だけで地震を抑えられないでしょうか。次元が違うなら、こちらに影響は少ないのではないですか?』


 確かに封印されているのは外界と隔絶された別の次元だ。そこだけで地震が起こるなら、こちらの世界に影響はないかもしれない。

 こんなにすぐに解決策を思い付くなんて、アイリスは凄いな。ゲームの主人公というのもあるんだろうけど、ちゃんと成長してるんだ。


 やっぱりモブが軽率に判断したらダメだな。追い込まれた状況で下手に決めなくて良かった。


 それにアイリスは女王陛下だし、国や大陸の命運がかかるなら責任は彼女に預けたい。モブの私には責任が重すぎるので、本当にヤバくなるまで封印を無理矢理解除するのは避けたい所存だ。いざとなったらやるけど。

 私が心の中で自己保身に走る中、次に聞こえてきたのはクロッカス殿下の声だ。


『それが出来れば一番ですが、封印の詳細がわからない以上、調査をしてみないと可能かはわかりません。土の大妖精にも許可が必要です』


 クロッカス殿下はこう言っているが、院長がいるなら不可能なんてないんじゃないかな。土の大妖精という名のモグラもここにいるし。

 ちらっとモグラを横目に見ると、オレンジを口に放り込みながらモゴモゴと答えてくれた。


「力が戻るなら何でもいいぞ。その時だけ妖精達を避難させて、後からまた作り直せば良いだけだ」

「妖精の住居とかあるわけじゃないの?」

「そんな物、我らに必要ない」


 モグラはふんっと息を吐き出してドヤ顔になる。

 ひょっとしてあそこに住んでる妖精って、皆モグラ型なんだろうか。大妖精がこんなだし、可能性があるな。

 うっかり頭の中でモグラ達が洞窟を掘るのを想像してしまった。

 そんな私を他所に院長が面倒そうに水晶をモグラの前に置く。


「それならさっさと伝えてよ。この水晶に向かって話せば伝わるから。ちゃんと人間に伝わるように話してね」

「院長。ずっと言おうと思ってたんですけど、大妖精にそんな態度でいいんですか?」


 いくら弱ってると言っても、大妖精に対する尊敬とかないのか。院長は他の妖精も見えてるのに、そこの所どうなんだろうと思っていた。

 対して院長は何もない空中に目を向ける。


「いいんだよ。妖精は人間みたいに法律がないから、皆自分勝手なんだ。妖精同士で物事を決める時は『勝った奴が正しい』の。ボクに力を貸してくれてる妖精達も、ボクが力で捻じ伏せて協力させてるだけだから。変にへりくだると妖精は碌な事しないよ」


 妖精を従わせるってもう少しキラキラしたイメージだったんだけどな。友情とか信頼関係とかじゃなくて暴力なんだ。


「対話で力を貸してもらうとかは出来ないんですか?」

「無垢な子どもが妖精に気に入られて力を貸してもらう事もあるけど、大抵が20年くらい力を貸す代わりに500年くらい遊び相手になってもらうとか、碌な契約にならないよ。大抵、その子は死ぬ事も出来ずに飽きて捨てられて、名前もわからず彷徨うモノになっちゃうけど。......そういう奴らと対話したい?」

「......いいえ」


 夢がなかった。とんだ悪徳商法だ。

 それなら院長みたいに力で従わせた方が良いかもしれない。


「だからサクラも、土の大妖精が加護をあげるとか、力を貸すって言っても頷いちゃダメだよ」

「わかりました」


 美味い話には裏があるって言うからね。

 闇バイトみたいな物だ。


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