表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/372

記憶を改変してでもモブに徹したい

 院長は真面目な顔をして私を見つめる。


「だって妖精が見えるとか他国の皇族に知られたら面倒だよ。勝手に連れ去ろうとするかもしれないし、正面切ってあの皇子がアイリス女王陛下に頼んでくるかもしれない。サクラは表向き一般人なんだから、断るのも一苦労でしょ」


 確かに妖精が見えるとか、地震の真実とか知ってしまったから、ますます帝国に連れ帰ろうとするか。

 それは面倒くさい。

 乙女ゲーム特有の恋愛パワーで断るにしても限界がある。政治が絡むなら尚更だ。

 ダンジョンでは色々必死過ぎて、そこまで頭が回ってなかった。


「すみません。そこまで配慮できていませんでした。確かに私も帝国に行くのは避けたいです。どうやっても面倒な立場に置かれそうですし」


 自分の行いに反省しながら院長を見上げると、院長はちらっとクロッカス殿下に目を向ける。

 クロッカス殿下は仕方ないという様に頷いた。


「サクラがウィスタリアに残りたいと望むならいいだろう。わかっていると思うが、異空間にいる間だけに留めるようにな」

「はーい。いい感じに変えておくね」

「お願いします!」


 私が居て良かったのは戦闘補助と妖精が見える部分だけだったからな。

 それを補完すれば皇子とロータスの二人でなんとかなってたに違いない。二人とも攻略対象だからね。

 それに記憶を改変したって、ダンジョンで上げたレベルは変わらない。

 ロータスもダンジョンを攻略するにふさわしいレベルになっているはずなので、違和感はないだろう。私はステータス画面が見えないけど。

 アイリスを思い続けてるロータスなら帝国に付く事はないだろうし、レベルを上げたから近衛騎士団の試験も合格できるはずだ。


 むしろ帝国の皇子を助けたから出世できるんじゃないか? ゲームの予定通り近衛騎士団団長候補に戻れるのでは?


 それも踏まえて院長に内容を相談し、記憶を変えてもらうことにした。

 そのやり取りを見ていたモグラがボソリと呟く。


「記憶を改変して自分の都合の良いように事実を変えるなんて、やってることが悪役ではないか」

「元はと言えば貴方が私を巻き込んだせいでしょ」


 モグラにだけは言われたくない。

 それにここにいるのはラスボスとその側近なんだ。悪役で合っているし、私もどちらの味方になりたいかと言ってさたら悪役陣営でいたい。

 そこまで考えてふと気づく。

 ーーーそういえば、いつもクロッカス殿下の側にいるアンバーが今日もいない。

 なんとなく違和感を感じていると、院長がフードを被ってこちらを振り返った。


「この二人はボクが適当に発見できる場所に置いてきますね」

「頼んだ」


 殿下の言葉に頷いて、院長はそのまま気絶した二人を抱えて部屋から出ていく。


「こちらで見つけたことにしないのですか?」


 私の疑問にクロッカス殿下が答えてくれた。


「私たちが見つけると、我々がサルファーの皇子を攫って良からぬことを企んでいたのではと疑われるだろうからな。近衛騎士団に見つけさせた方がいい。アイリスとの仲が修復されたとはいえ、すぐに仲良く手を取り合う事は難しいからな。難癖付けたい輩は大勢いる」


 やっぱり貴族社会って大変だな。一筋縄じゃ行かない。

 リリーさんは『雪の妖精』的な見た目のほかにも、世渡りがうまかったのだろう。そうでないと貴族や聖職者と親しくなって『女性の社会進出』なんて進められない。


 私はそういう面倒なのは避けて地味に生きていたいので、相手の記憶を改変してでもモブに徹っする所存である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ