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人でなしの発想

 モグラの言葉に院長が面倒そうな顔をする。


「それってどれくらい猶予があるの?」

「残り少ないぞ」

「妖精の『残り少ない』って百年くらい誤差があるから困るんだよな……」


 頬を掻きながら院長がぼやく。

 妖精は人間と違って長生きだから、時間の感覚が異なるんだろうな。

 院長は水晶の物色を止めて立ち上がる。

 その際、さりげなくポケットに水晶を入れたのが見えた。

 油断も隙もない。

 院長はそのまま何事もなかったように腕組みをして、モグラを睥睨する。


「ボクやサクラが生きてる間に地震が起こったら流石に困るな。ウィスタリアを守ってくれるなら、解除してもいいけど」

「よかろう。ウィスタリアは我が守ってやる。約束だ」

「そう? なら解除するよ」


 院長の目線の先には、サルファー帝国の紋様が刻まれた古い石板が置いてある。

 ボス戦の背景を色取るただのオブジェクトだと思ってたけど、ひょっとしてアレが封印なのだろうか。

 院長が迷わずそちらに歩みだそうとするので、私は慌てて院長の腕を掴んで止めた。

 その際、モグラを持っていた腕にも力を込めてしまい、うっかり握り潰しそうになったが些細な問題だ。


「ダメですよ!?」

「なんで?」


 院長はキョトンとした顔で私を見る。

 本当に何がダメなのか理解してない顔だ。院長はそのまま私に続ける。


「土の大妖精の力が足りなかったら、ボクが補助すればウィスタリアは無事だよ? それに周りの国に被害が出たらウィスタリアが助けてあげて、恩を売ればいいんだよ。サルファー帝国のせいで地震が起きたって情報操作して広めておけば、帝国に領土を奪われた国はここぞとばかりに帝国を責めるでしょ。ウィスタリアは疑われない。ね? 問題ないでしょ?」

「人でなしの発想!!」


 情報操作ってどうするんだと言うツッコミは無駄だ。なんせ院長は『王の影』のトップだし、院長本人も姿を自在に変えられるのだ。組織力と本人のチートじみた能力が不可能を可能にさせる気しかしない。


「だって、いつか起きるなら自分の大切なモノを守れる方が良い。ボクにとってはその他大勢よりもボクの守りたいモノを守るよ」


 院長は微笑んで私の頭を撫でる。

 院長の言う事は正しいかもしれないけど、被害がデカすぎて素直に頷けない。

 私は必死に院長の手を握る。


「今すぐ土の大妖精が消滅するわけじゃないんだから、他の人に相談しましょうよ。院長ならまたここに来れるでしょ? もっと良い方法が思いつくかもしれないじゃないですか」


 こういう大事を一人で決めるのは間違ってる。

 私達は主人公じゃないのだ。失敗する可能性がある。

 なるべく皆で考えて、良い方法を導きだした方が良いと思う。

 院長のやり方は、本当に行き詰まってそれしか方法がない時で良い。よく考えて本当にそれしかないなら、私も覚悟を決めて院長と同じように誰に妨害されようがなんだろうが封印を解く為に動くだろう。


 話し合いで解決しなかったら暴力に限る。


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