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ホラー映画

 モグラに取ってみたら、封印を解けば自分の力が返ってくるし、自分を封印して犠牲にした上で安全に生活していた帝国の民やサルファーの末裔に復讐が出来る。

 地震はモグラのせいではなく、自然に起きるのだ。

 モグラは約束を破ったことにはならない。


 モグラめ。私が地震の仕組みを知らなかったら、説明しないまま封印を解かせるつもりだったな?


 悪い妖精じゃないと思っていたが、考えを改めないといけないかもしれない。

 院長が『妖精は約束や契約の範囲外だととんでもないことをする』って言ってた意味がわかった。

 『契約に含まれてないから』『聞かれてないから』ってヤバい契約を結ばせる悪徳商法と同じ手口だ。

 しかも院長の言葉を信じるなら、妖精はその考えがデフォルトの可能性がある。


 ヤベー奴らじゃん。妖精が見えなくて良かった。


 しかも今の私にはモグラ以外にも問題がある。

 目の前には疑うような目をした皇子と、私の奇行に引いているロータスがいるのだ。


「おかしな事ばかり言っていないで封印を解け。それとも私を帝国に帰す気がないのか? 今まで圧遇してやったというのに」

「違うんです! 本当に解いたらまずいんです!」


 皇子の目が責めるような目が辛い。

 でも封印を解くわけにはいかない。

 地震で大陸中に被害を出すわけにはいかないのだ。

 私は改めてモグラを睨みつけ、思い切り両手で握りしめて上下に揺さぶってシェイクする。


「本体の封印は解けてるんだから、自分でどうにかしてよ! 普通に帰してくれない!?」

「うごごごごっ、断る。だがそうだな。自分の国に被害が出るのが困るのだろう? 我の力でウィスタリアは被害がないようにしてやるぞ」

「そういう問題じゃない!」


 モグラも強情だ。

 いくら振り回しても意見を変えない。

 そしてモグラが見えない二人からは、私が奇行に走っているようにしか見えない。

 悪循環だ。

 苛立ちが頂点に達したのか、皇子が私に向けて構える。


「私を帰さないつもりなら、こちらも強硬手段に出るぞ。お前を気絶させてでも封印を解かせる」

「俺も……アイリスさまのところに、ウィスタリアに帰らないといけないんだ……!」


 ロータスが剣を向け、皇子が魔力を高めて魔法を撃つ準備を始める。

 二人を無力化するのは簡単だが、それでは何の解決にもならない。

 むしろ余計にこじれる気がする。

 こればかりは暴力でどうにもならない。どうしたら……。


「助けて、院長……!」


 思わず小さくつぶやいた言葉に、


「もちろんだよ」


 返答が聞こえた。


 おかしいな。幻聴か?


 しかし次の瞬間、私の真横の空間に亀裂が入った。


「何!?」


 モグラが驚く中、ミチミチ、バリバリと音を立てて空間が真っ直ぐ縦に割れていく。


「ボクのサクラを虐めたのはどこのどいつだ……」


 空間の裂け目から、ぎろりと黄金の瞳が覗く。

 ホラー映画で見たような演出だ。シンプルに怖い。

 その瞳の持ち主は空間の亀裂に指を入れ、そのまま左右に割いて次元の入り口をこじ開けてきた。

 そうして裂け目からバチバチと禍々しい黒いエフェクトを見に纏って姿を現したのは、予想通り、いつもの院長だった。


 どうしてこんな禍々しい登場シーンになるんだ。院長、見た目は妖精っぽいのに。


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