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前世の知識で無双出来るとは限らない

「土の大妖精はなんと?」


 モグラの言葉が聞こえない皇子が翻訳を急かす。


「封印を解いても帝国の民には干渉しないって言ってます。その代わりに助けを求めても手出ししない、サルファーに騙されて封印されたからだと」


 モグラの言葉をそのまま伝えると、皇子さまらしい今までの余裕な素ぶりが嘘のように私を睨みつけてきた。


「そんな訳ないだろう。土の大妖精が悪さをしたからサルファーに封じられたのだ。貴様、サルファーの血を引く我ら皇族を愚弄する気か?」


 そんな事を私に言われましても。

 とりあえず私は私なりに意見を述べてみる。


「確かにモグラが言っていることが嘘の可能性もあります。でもモグラが害しようとしたのはサルファーの末裔の皇子や帝国の人間だと勘違いしたロータスだけです。悪い妖精なら宝石が割れた時点で大惨事になっていたと思います」


 私は封印を解いて貰おうと呼んだだけ。なんなら迎えも来ていたらしい。私に他の妖精が見えないから気づかなかったけど。


「今も私の手の中に収まって、恨んでるはずのサルファーの末裔の話を聞いてくれてますし、本来は理知的で悪い妖精じゃないと思うんです」


 そう伝えながらモグラに視線を戻すと、モグラが目を細めて私を見たーーー気がした。

 表情がわかりにくいんだよ。


「この地は元々地震が多い土地だったのだ。そこにサルファーがやってきて『これから今までにない地震が起きる。このままでは多くの生き物が死んでしまうから、皆が避難する間だけ地震を抑えて欲しい』と頼まれてな。神の子の要請だ。否とは言えぬ。それで言われた通りに地震を抑えた途端、我は封印されたのだ」


 御伽噺が擦りもしてない。

 どんだけ都合の良く改変したんだ。歴史の闇を見た気分だ。

 でもサルファーの気持ちもわからんではない。

 前世は地震大国に住んでいたので、その被害も悲惨さも知っている。その地震が妖精一人の犠牲で収まるなら利用しようと考えるかもしれない。

 それにしたって、せめて相談してからにしろよと言わざるを得ないが。

 そこまで考えてはっとする。


「今まで地震を魔法で抑えてたのなら、封印を解いたらそれが解放されて帝国を地震が襲うんじゃ...!?」


 しかも数百年、あるいは千年単位で抑えられていた反動で、前世で起こった大震災より悲惨な地震になる可能性がある。

 下手したら帝国だけじゃなく、ウィスタリアや他国にも影響があるかもしれない。


 そんなヤバい封印を解除しろと!?


 私が顔面蒼白になる中、サルファーの皇子は怪訝な顔で私を見つめる。


「地震なんて御伽噺でしかない。地面が揺れるなんて妖精が使う大魔法で起きるものであって、自然に起きるわけがないだろう」


ーーーは?


「土の大妖精は帝国の民に手出ししないと言ったのだろう。なら地震は起きないな。封印を解いても何の問題もないだろう」

「はぁ!?」


 思わず声が漏れてしまった。

 ひょっとして、土の大妖精が抑えていたおかげで、この大陸は地震が極端に起きなかったんじゃないだろうか。

 神話や御伽噺に語られる存在でしかないなら、地震の恐ろしさを知らないし、自然に起きるものだとも思ってない。


「違いますよ! 地震って言うのは自然現象で......その、大陸のプレートが沈みこむのを直す反動で起きるものであって......」

「お前は何を言っているんだ......?」


 ロータスに更に引いた目で見られてしまった。

 ダメだ。私も前世のふわっとした知識しかない。スマホがあれば調べられたんだけど、そんな便利な物はこの世界にはない。説明を求められると困る。


 そもそも『モグラが地震を起こす』と信じられてる世界で、こんな事を言っても信じられるわけがないよね!


 地球は丸いと最初に言った人の気分を今味わってる。

 ご満悦なのはモグラだけだ。


「お前はよくわかっているな。地の世界に理解が深い人間は稀だぞ」


 前世のおかげですね!

 その知識が役に立ってないけど!!


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