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種族が違うと見分けがつかない

 何とも言えない沈黙が流れる中、私はすっと居住まいを正した。


「二人とも、怪我はない?」

「あ、ああ。大丈夫だ」


 ロータスが困惑しながら答える。

 痛々しい目で私を見るのは止めてほしい。今すぐこの場から消えたくなる。

 二人が対峙していたイケオジは消えていた。やはりこのモグラが作った偽物だったようだ。

 私は手の中でジタバタしているモグラに話しかけた。


「私たちの勝ちって事で、元の場所に帰してくれない?」

「断る」


 イケボで返してきたモグラを両手に握りしめる。


「ぐええっ。待て待て。お前は帰してやる! 最初からその予定だった!」

「私だけじゃダメなの。二人も帰して。そもそもロータスはなんで帰してくれないの? サルファーと関係ないんだけど」


 モグラを閉じ込めた『サルファー』の皇子を敵視するのはわかるとして、なぜロータスまで敵視するのか、ずっと疑問だった。

 しかし私の質問にモグラは首(?)を傾げる。


「あれはサルファーの人間ではないのか? サルファーの末裔と近くにいるからそうだと思っておったわ」

「違うよ。ロータスはウィスタリアの人間」

「うむ……人間は見分けが難しいな。お前みたいに妖精の血が入っているのはわかりやすいんだが」


 ただの勘違いだったみたいだ。

 人間も詳しくない人が魚とか鳥を見ても全部同じに見えるから、それと似たようなものなのだろうか。


「ドンマイ。ロータス」


 溜息をついてロータスの方を向くと、ロータスは未だ困惑顔のままだった。

 ロータスは腫れ物にでも触るように私に問いかけてくる。


「お前は……誰と話してるんだ?」

「え? このモグラと」


 両手に持ったモグラをロータスの前に掲げるが、ロータスの表情は変わらなかった。


「その……モグラというのも見えないのだが」

「私にも見えんし、声も聞こえんな」


 皇子様までロータスに同意する。


 ―――そういえば、妖精って人に姿が見えないんだ。御伽噺にも出てくる大妖精は別かと思ってたんだけど、ひょっとして本体は普通の人には見えてないのか?


 ちらりとモグラを見ると面倒そうに説明してくれた。


「最近の人間は妖精を見る目がないからな。無垢な子どもの頃は見える奴もいるが、すぐに見えなくなったしまう。さっきまではわざわざ声を聞かせてやってたんだ。そいつらには我の姿も声も届かんぞ」

「私も妖精は見えないんだけど」


 院長は見えてるみたいだけど、私も他の人と同じで妖精は見えないはずだ。

 モグラに再度視線を向けると、納得したような顔で頷かれた。


「ああ、道理で。ここに来てすぐ他の土の妖精がお前を迎えに行ったのに、無視されたのはそういう事か。我は力が強いからな。お前に感受性が少しでもあれば見えるぞ。お前は妖精の血が濃く出ている方だからな。それも原因だろう」


 あれかな。出してる電波が強いと受け取る側も受信しやすいみたいなものか?


 どっちにしろ、他二人からすれば今の私は自分の手に向けて話しかけている危ない人である。

 それは困惑もされるわ。

 私は顔を引きつらせながら改めて説明する。


「ええとですね……。私の手の中にはちゃんと土の大妖精がいまして……会話も成立してるんです……本当なんです……!」


 今更言ってもただのヤバい人じゃないか? 信用されないのでは?


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