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試練

 確かゲームでは大妖精の間に辿り着くと土の大妖精が出てきて、『よくここまで辿り着いた。最後は我がお前たちの実力を試してやろう』って言ってボス戦になるんだよね。

 でもボス戦で出てくる土の大妖精って人型だったと思うんだけどな。決してモグラではなかった。

 しかもゲームと違い、今回は私が封印を解いてしまっている。


「気を付けて。サルファーに封印された恨みを晴らすために、土の大妖精が襲ってくるかもしれないから」


 私の言葉に二人が気を引き締めたような顔になる。

 不意打ちを警戒しながら広間に足を踏み入れると、地の底から響く笑い声が聞こえた。


「よくここまで辿り着いた。最後は我がお前たちの実力を試してやろう」


 ゲームのままだった。

 そうして現れたのはモグラではなく、ダンディなイケオジだった。オールバックの黒髪にワイルドな顎髭が褐色の肌に良く似合っている。細めの立て襟に着丈が長く、繊細な衣装が施された伝統的な衣装を身にまとっている。

 ゲームのままだ。乙女ゲームなだけあってビジュアルが良い。声もモグラが発していたのと同じイケボだ。

 私が見たモグラはなんだったんだ。

 困惑していると土の大妖精が不快そうな顔でサルファーの皇子を見る。


「我を傷つけられぬほど実力不足なら、お前たちを土に返してやる。我を封印したことを後悔させてくれるわ」


 そう言って一歩前に出る土の大妖精。

 大妖精というくらいだ。院長より強いなら傷をつけられるわけないと思う。

 ゲームではあくまで『試練』であり、ある程度戦ったらアイリスと皇子のラブラブパワーのおかげで実力を認めてダンジョンから出してくれた。

 しかし今は『試練』の振りをして私たちを殺そうとしている。

 ゲームにはなかったセリフでそれを確信した。

 私はとっさに二人の前に出て、土の大妖精と向き合う。


「土の大妖精様! 封印されてサルファーを恨むのはわかります。ですがこちらにおわすのはサルファーの末裔。本人ではありません。今までの『試練』通り、実力不足ならここから出すだけにしていただきたいのです」


 院長と同レベルの実力者の前に出るとか、怖くて普段ならやらないけども今はそうも言っていられない。生きるか死ぬかの瀬戸際だ。説得で済むならそれが一番だ。

 土の大妖精は土色の瞳を私に向けると、目元を和らげた。


「これは『試練』だ。それ以上も以下もない。―――案ずるな。お前は出してやる。下がっていろ」


 なんでこんなに好感度が高いんですか???


 ひょっとして封印を解いたのが私だとわかっているのだろうか。それなら巻き込まないでほしかった。

 困惑しているとサルファーの皇子が私の横に並んで肩を叩く。


「今まで我々の先祖が幾人も乗り越えてきた『試練』ならば、私たちも乗り越えられる。私を信じろ」


 今までと同じ『試練』ならね!


 ダンジョンでレベルが上がってかなり強くなったから、自信が付くのはわかる。でも目の前の化け物との実力差が測れないと死ぬぞ。それとも皇族だから、周りを鼓舞してその気にさせて本来の実力以上を引き出そうとしているのだろうか。

 それにしたって勝ち目が薄すぎる。

 尻込みする私の前にロータスが出る。いつものフォーメーションだ。


「どちらにせよ、戦うしかないのならやるしかない!」


 確かにそうだ。

 ロータスだって実力差がわかっているだろうに決意を固めている。


 そうだ。私にとっても、いつもの事じゃないか。ぶっつけ本番で何とかするしかない!


 私も決意を固めて前を向く。


「ここは無暗に魔法を使うと、水晶が落ちてきます! 当てる自信がないなら使わないで下さい!」


 ゲームでもそういうステージギミックがあった。ボス戦で魔法を使うと、こちらにダメージが入る仕様だ。

 現実でボス戦の広間を見て納得した。

 なんせ天井に今にも落ちてきそうな巨大な水晶が垂れ下がっているのだ。魔法を使うと振動や余波で落ちてきかねない。

 ゲームではダメージで済むが、現実では人間よりも巨大な水晶が落ちてくるのである。


 確実に死ぬ。


 現実の方がゲームより厳しいって、はっきりわかるんだね。


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