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戦乙女

「早速、試練の時か。二人とも、頼んだぞ!」


 言いながらも自分の周りを半透明な淡黄色の壁で覆い引きこもろうとする皇子。

 私はとっさに皇子に向けて叫んだ。


「これは試練です! 皇子も力を示す必要があります!」


 ただでさえモグラの好感度が低いんだから、ちょっとくらい戦って認められないとダメだと思う。

 モグラは絶対に私たちの様子をどこかから見てるはずだ。院長みたいに。

 しかし皇子様は安全な壁の中で腕を組む。


「優れた従者を持つのも優れた者の証だろう? お前たちの頑張りが私の頑張りだ。期待している」


 この腹黒皇子め。口が回る。


「そう思うならせめて武器を下さい! 石とか出せませんか!?」


 半分切れながらも要求すると、怪訝そうにしながらも初期魔法の『ストーンブラスト』で石を生成してくれる。

 偉そうにしてるけど、皇子もこちらの不利を理解しているんだろう。

 本来なら石のつぶてを敵にぶつける技だが、このダンジョンの敵に初期魔法では通用しない。なので生成された石だけ頂いていく。

 ワイバーンは小型の飛竜だ。ブレスは吐かずに、鋭いかぎ爪や翼で起こした風で攻撃してくる。

 しかし初期レベルで攻撃に当たったら即死だろう。

 ロータスが剣を抜いてワイバーンに対峙しているが、幸いにもお互いの隙を狙っているだけで攻撃には転じていない。

 相手がロータスに気を取られている今がチャンスだ。

 貰った石を『物質強化』して『身体強化』して投げる! 狙いは目!

 目を潰せば後はタコ殴りでいけるかと思ったが、実際はそうはならなかった。

 なんせ投げた石でワイバーンの頭がはじけ飛んだからだ。

 

 やだ……私のレベル……上がりすぎ……?


 考えてみれば中ボス(蜘蛛)やらルートボス(アネモネ)やら謎の怨念やら、強敵ばかりと戦ってきたのだ。レベルも上がるだろう。

 仲間がやられてワイバーンが動揺している間に、容赦なく石を投げまくる。

 気が付けば辺りはワイバーンの死体の山になっていた。

 辺りに柔い石しか見当たらなかったので、皇子が石を無限生成してくれておかげである。

 緊張から解放されて汗を拭っていると、皇子が土の壁の中から出てきた。


「素晴らしい戦いぶりだ。まるで先の戦争の戦乙女のようだな」

「……戦乙女?」

「知らないのか? ウィステリアとの戦争の時、帝国軍に大打撃を与えた女がいるという話だ。美しくも強いその女を『ウィステリアの戦乙女』と呼んでいたが……どうやら亡くなってしまったようだな。実際に会ってみたかったものだ」

「へぇ……そうなんですね……」


 それってリリーさんの事では?


 私がその娘ですとは言えないので、曖昧に笑って誤魔化していると皇子はすっと私の手を取った。


「お前も強く美しい。その力は帝国でこそ輝くだろう。この試練を共にしたのも運命だ。ここから出たら、私と共に帝国に来い」


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