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帝国の御伽噺

 そうこうしている間に地面に倒れている二人が目を覚ました。


「一体、何が起きたんだ......?」


 ロータスはすぐ起き上がって周囲を警戒している。

 しかしサルファーの皇子は座り込んだまま、愕然とした表情を浮かべた。


「ここは......まさか......」

「皇子、何かご存じなのですか?」


 ロータスが尋ねるとサルファーの皇子は信じられないといった様子で頷いた。


「ああ、我が国に伝わる『土の大妖精』の居所だと思う。皇帝になるための試練を与え、達成すれば力を貸してくれるという伝承が残されているんだ。まさか、実在する場所だったなんて……」


 そうか。皇子が鍵となる宝石をぞんざいに扱っていたのは、妖精の話はただの伝承で宝石がその場所に至る鍵だと知らなかったからか。

 ゲームだとアイリスと皇子が力を得るために、この場所に行く方法を探す探索シーンがあるんだろう。

 それを端折って無理矢理取り込んでくるとは。やっぱりこのゲーム、バグっている。

 現状を嘆いていると、ようやく立ち上がった皇子が私に視線を向けた。 


「ところで……お前はどうしてここに?」


 二人の警戒したような視線が集中する。

 そりゃ怪しまれるよね!

 しかし二人が気を失っている間にどう説明するかは考えておいた。


「私は帰り道に歩いていたら突然、宝石が飛んできたんです。地面に落ちた宝石が割れたと思ったら、中からモグラっぽい何かが出てきて……そのモグラのせいでこの空間に飛ばされたんです」


 私が触ったから割れたなんて言わない。後が怖いので。


「モグラ……?」


 幸いにも私の話を聞いて皇子は疑うことなく、何かを考える素振りを見せる。

 私の話から話題を逸らすためにも、私は皇子に質問してみる。


「あのモグラに心当たりがあるのですか?」

「我が国では『サルファーと土の大妖精』の逸話は絵本にもなっている。絵本ではモグラで描かれることも多い。我が国の教会では虹の女神や女神の子サルファーと同じく人間態で伝わっているが、ひょっとしたらモグラの姿の方が本当なのかもしれない」

「では、お前が見たモグラが『土の大妖精』……?」


 ロータスが訝し気に私を見つめる。

 私は宝石から急にモグラが出てきた話をしても受け入れられてる事にビックリだよ。

 流石ファンタジー世界。

 しかしあのモグラが『土の大妖精』ならイケボなのも頷ける。ゲームでも重要人物だから。

 でも敬われているはずの『土の大妖精』が宝石に『封じられていた』って言ってたのは変な話だな。

 それを突き止めるためにも、私は皇子に質問を重ねる。


「その……帝国に伝わる『サルファーと土の大妖精』の話ってどういうお話なんですか?」


 確か『ウィステリアと雪の妖精』の話のように、帝国には『サルファーと土の大妖精』の話が伝わっていたはずだ。

 ただ転生したばかりの頃に少し聞いただけで、内容は朧気だ。

 なんせ文字とか魔法の扱いとか、覚えるものが多かったもので。

 しかも帝国以外の他の国にもウィステリアやサルファーと似たようなな御伽噺が伝わっていて、虹の色の上から順に女神の子が地上に降りてきたとされている。

 そのため大陸にある七カ国の王は、それぞれ降りてきた虹の女神の子の末裔とされているのだ。

 どの女神の子も妖精と関わり、人々を救ったり国を作ったりと内容が似通っているせいで、自分の国である『ウィステリアと雪の妖精』以外は曖昧になってしまった。

 ロータスも私と同様にこの話を知らないらしく黙っている。

 

「そうか、他国では知られていないか……。ならば教えよう」


 サルファーの皇子はどこか懐かしそうに語り出した。


『空には虹の女神と、その子どもたちが住んでいました。


 ある日、女神の子サルファーが地上に降りてきて、人間や妖精の暮らしに興味を持ちました。


 サルファーはしばらく地上で一緒に過ごす内に、地上の皆が地面が揺れて困っているのを知りました。


 そこでサルファーは、大地を揺らして皆を困らせている土の妖精を叱りました。


 叱られた土の妖精は反省して、サルファーと一緒に人々を守るようになりました』


 ―――『叱られた』ってマイルドに表現してるけど、実際は悪いことをしたから宝石に封印されたのでは?


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