表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

174/372

ダンディモグラ

 『宝石って割れるんだ』とか『私のせいじゃありません』という思いが頭の中を駆け巡ったが、事態はそれを更に悪化させていく。


 宝石の中からモグラが出てきたのだ。


「は???」


 余りの事に思考が停止してしまった。

 モグラは宝石より一回り小さい。私の手のひらにちんまりと乗っているが、重さを感じないレベルだ。


 お前は桃太郎か? いや、宝石から出てきたから宝石太郎???


 パニックになりながらも手の上のモグラを見つめていると、彼(?)は言い争う皇子とロータスを見つめた。


『おのれ。よくも長い間、我を封じてくれたな。許さんぞ』

「喋った!?」


 しかもやたらダンディで渋めのボイスだ。モグラなのに。でもこの癖のある声、どことなく聞いたことあるような……。

 ここで私が『前世の声優』という結論に辿り着く前に、私の手の中にいるモグラは行動を起こした。

 二足で立ち上がり、両手を宙に広げる。するとモグラの頭上に真っ暗な空間の亀裂が現れた。


 あ! これ知ってる! イベントで異空間に吸い込まれる奴!


 ちなみにモグラがその異空間への扉を開けたため、モグラを手にしていた私はその真正面にいることになる。

 つまり、真っ先に私が吸い込まれた。


「サクラ!」


 アンバーがいの一番に反応して吸い込まれる私に手を伸ばす。

 その顔には珍しく焦りが見える。

 私も咄嗟にアンバーに手を伸ばす。


『お前は来るな!』


 脳に響くダンディな声と共に、アンバーの腕が弾かれる。

 私はそのまま暗闇に吸い込まれ―――最後に見たのは空間に吸い込まれる皇子とロータスの姿だった。


 * * * 


 目が覚めるとそこはまるでモグラが掘ったかのような洞窟だった。

 見た限りでは一直線に通路が続いている。

 周りにはサルファーの皇子とロータスが倒れている。見たところ、怪我はないようだ。


 参ったな。まさかダンジョン攻略に巻き込まれるなんて。


 この場所はゲームで見覚えがある。

 確か帝国ルートで『土の大妖精に認めてもらって帝国での地位を確かにする』内容で、ゲームでも終盤付近に訪れる場所のはずだ。

 確か、『土の大妖精』の居所に行くことのできる宝石を掲げて『サルファーの皇族』が呪文を唱えると転移することが出来る仕組みだったはずだ。

 するとあの宝石が『土の大妖精』の居所に繋がる宝石だったのか。

 そんな大事な物を人に渡そうとするなよ。

 しかし実際は皇子が呪文を唱えていないし、宝石が割れて中から謎のモグラが出てきたわけで……。

 そこでふと思い立つ。

 『転移』の魔法なんて相応の魔力が必要だ。しかも異空間とつなげるなんてそれこそ莫大な量だろう。

 つまりあのモグラはその『転移』の魔法のために、宝石の中に閉じ込められていた『燃料』だったんじゃないだろうか。


 そしてその封印を、私が持っているらしい『浄化』の力でうっかり解いてしまったのだとしたら……?


 そうすると、私が触れた途端に宝石が割れたのも説明が付く。

 付くけど、いや、うん、不可抗力だから、ロータス達には黙っておこう。

 ただの推測だし。合ってるかもわからないから。

 そもそも『浄化』って良い方に働きそうな力のはずなのに、なんで私のは悪い方に働くんだ。

 『恋革』は最後まで私を逃がしてくれないみたいだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ