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これって原作介入ですか?

 『王の影』の設定からして碌な組織じゃなさそうだったけど、本当にヤバかった。ミスしたら消されるって怖すぎない? しかもジェードがいない時―――休憩か休みの時に起きたことも連帯責任? ヤバすぎる。

 ここで『そんな所辞めて逃げよう』って言うのは簡単だ。しかし私もジェードも孤児である。後ろ盾もない。なんなら育った孤児院もその組織と繋がっている可能性がある。逃げた所で他の『王の影』に追われて殺されるのが落ちだ。

 これがゲームの主人公のアイリスだったら違ったのかもしれない。なんせ『主人公』なので無事に逃げて頼りになる貴族に助けを求めるとか―――


 ひょっとしてそれがジェードルートの開始だった? 私、またゲーム開始された直後に介入してないかな!?

 いや、まだわからない。違うかもしれないし。

 心の中で言い訳しつつ、解決方法を探るためにジェードに尋ねる。


「その隠し通路を使った人に聞けばいいんじゃない?」


 アイリスだったら教えてくれるでしょう、多分。

 しかし予想に反してジェードは残念そうに目を伏せた。


「僕でもその人に会えないんだ」


 女王陛下付きのジェードが会えないってなんで? 確かジェードは歴代最年少で『王の影』に選ばれた優秀な人材のはずだ。

 私の疑問が顔に出ていたのか、ジェードが答えてくれる。


「僕の立場は特殊というか……特別なんだ。僕がいなくなればその立ち位置が空くからそれとなく邪魔してくる人もいる」


 ドロドロした理由だった。確かに『女王陛下付き』ってだけで特別だ。なんせ王族付きの使用人ってことで安定した生活も約束される。

 『王の影』は王様や王太子を守るために城に使用人として使えているだけではなく、情報収集のために他の貴族の邸宅やまったく違う職種に潜んでいたりする。そんな中で入ってきたばかりのジェードがいきなり『女王陛下付き』になったら反感買いそうだ。それだけ優秀ってことだったんだろうけど。ジェードは若いから組織内だけでなく、普通に使えてる使用人からも嫉妬が凄そうだ。


「だからって邪魔するのは虐めじゃん。ジェードが悪いわけじゃないんだし」


 憤慨する私にジェードは薄く笑う。


「それくらい予想してたよ。それに僕の上司も……本気で解決させる気がないんだと思う。単純に、僕が足掻くのを見て愉しんでるだけだ」


 とんでもない上司だ。『王の影』で王様も直接守る立場のジェードが言う『上司』なんだからそれが組織のトップの可能性がある。

 そんなのがトップで大丈夫なんだろうか、『王の影』。

 そこでふと思い立つ。


「その上司ってアンバーだったりする?」


 あの人性格悪いし、何よりジェードルートのボスだ。

 しかしジェードは首を横に振った。


「アンバーは違うよ。同じところに所属はしてるけど。僕の上司はもっと……恐ろしい人だ」

「そう……」

 

 アンバーも『王の影』なのか。だからジェードの事色々知ってるんだな。

 しかし困った。妹だったら原作知識で隠し通路でも隠しダンジョンでも教えられるのに、私はほとんど何も覚えていない。

 何とか思い出せないか唸っていたら、唐突に妹の話が蘇ってきた。


『お姉ちゃん。ジェードルートはね、二週目以降の隠しルートなんだよ。一週目じゃ挑戦も出来ないんだ~』


 つまりロータスルート(一週目)もクリア出来てないから、アイリスがジェードを助ける二週目のルートが解放されない……?


 つまり私のせいか???

 いやいや、そもそも現実に一週目も二週目もないから。ロータスルートでジェードがそういう最期だったって可能性もある。

 心の中で言い訳しつつ、ジェードを見る。

 諦めたような笑顔だ。私より年下なのに人生に疲れた顔をしている。

 まるでブラック企業に勤めていた前世の私みたい。

 いや、確実にジェードの方がやりたくない仕事してるんだろうけど。

 しかし孤児院で無邪気に私の後を付いて回っていた弟のようなジェードをこのまま死なせるわけにはいかない。

 私には前世の記憶がある。妹の会話を思い出せば、隠し通路だって見つけられる。


「ジェード。私も協力するから一緒に生き残ろう」


 『主人公』以外には理不尽な世界でも、生きていれば希望があると信じたい。

 

「ありがとう、サクラ。その言葉だけでも……十分だよ」


 諦めたように、でも嬉しそうに笑うジェードが悲しい。ただの慰めに聞こえたのかもしれない。言葉だけならいくらでも言える。


 だけど私は、絶対に何とかしてみせるからね!


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